特別な友達
魅耶からの疑問とも呼べないそんな切り返しに、浅岡は表情を明るくして笑う。
「楽しいよ〜! 鳳凰さん本当に色んなこと知ってるし、僕の疑問も馬鹿にしないで一緒に考えてくれたりするし、あの人の話は聞いてて不思議と心地好くて」
にこにこと上機嫌で早口で捲し立てる。
想像以上の好感触な回答に、魅耶が逆に圧されてしまったほどだ。
そんなに気が合うのか、この2人は。
その事実自体も魅耶にとっては意外なことだった。
恐らくは魅耶が抱いている鳳凰の印象のせいもあっただろう。
自分が原因ということも理解した上で、鳳凰というあの存在は特定の相手しか受け付けないのだとどこか思い込んでいた。
確かに浅岡に会いたいと言い出したのは鳳凰だ。
それを踏まえると可笑しなことではないのかも知れない、と魅耶は考え過ぎてよく分からなくなる。
「よく考えたらさ、久し振りだったんだよね。僕の話を真面目に聞いてくれる人って」
先程までの浮ついたものよりは落ち着きのある、でも明るいトーンで浅岡が続ける。
「冴山さんや逢坂さんを除いた、所謂同業以外の人だと初めてかも知れないんだ。僕の話を嘘だ、って、言わない人」
そう告げる浅岡の表情にはもう悲しみや悲壮な感情は全くなかった。
彼は自分の中で、既にその過去を乗り越えている。
だからこうしてあっけらかんと話が出来るのだ。
浅岡は所謂霊感があり、何もないところを向いて明らかに何かと喋ったり、学校で何かと出くわしたりしてきた。
それを全く躊躇なく平然とした態度で周りに言うものだから、クラスでは気味悪がられ居場所をなくした。
けれど浅岡は仕方のないことだと、自分の境遇を受け入れ変に抗わず、自分の在り方を優先した生き方を続けた。
その流れで彼は自身の経験を基にしたホラー小説を書いている。
魅耶が知っている浅岡の経歴はこんなところだった。
そんな目に遭っていたら僕だったら嫌になってただろうな、と魅耶は今でも思う。
けれど浅岡はそのお陰でこうして、鳳凰という特別な友人と出会うことができたのだ。
自分を否定しない、周囲に受け入れられないことに腐らない。
駄目なところだと指摘された部分を本当の意味で武器にして、無意識のうちに戦って多くを得てきた。
そういう目で浅岡都という人物を見てみると、この男は実はとてつもなく強い存在なのかも知れない。