特別な友達
魅耶にしてみれば、あんな顔をさせるくらいなら暫く放っておけばいいのにと思う。
そんな真似など出来ないのが華倉という人間の弱さであり、本質だと言うことは分かっているけれど。
「なので……そうですね、残念ですが今は手紙を書く時間も余力もないんだと思います」
済みません、と魅耶は浅岡に頭を下げる。
まさかこの2人がまだ文通をしていたとは魅耶も考えておらず、想定外とは言え何も伝えなかったことを謝罪した。
案の定浅岡は両手を軽く振り、逢坂さんのせいじゃないですよ〜と返す。
しかし浅岡にとって気掛かりであることに変わりはなく、そっか、と改めて落ち込んだ様子を見せた。
最近は雑誌も借りに来ていなかった。
魅耶は今になってここ数ヶ月の出来事を思い出していた。
完全に死んでいなかった最鬼のこと、篠宮広政に自身の力と永遠の命を押し付けようと試みた聖獣白沢。
鳳凰は聖獣という立場からも、「この世の理」を崩さないために相当無理をして働いていたのだ。
それ自体は魅耶も評価している。
結果的にとは言え、そのお陰で華倉も助かり最鬼も完全に仕留めることが出来た。
「いつ頃よくなるとかも……分からないですか?」
浅岡が魅耶に困惑そうな視線を寄越しながら訊いてきた。
魅耶からはそうですねと答えるしか出来なかった。
一番近くで過ごしている麒麟が『回復は緩やか』だと言っているのだ。
全快を期待するなら、余程の年月が掛かるだろう。
そうは思ったがそのまま告げるわけにはいかず、魅耶は適当に言葉を変えて浅岡に不審がられない内容にして伝えた。
浅岡はテーブルに突っ伏すように手の甲に顔を伏せ、大きな溜め息を零しながら「ざんねん〜……」と漏らした。
「まだまだ聞いてほしい話もいっぱいあるのに」
「楽しいですか、彼との交流は」
勿論楽しいから続けているのだという客観的事実は魅耶にだって分かる。
しかし魅耶にとって鳳凰とは対立してしまう相手だ。
華倉に関して協力すべき時はあるが、平時は特段仲良くする必要はない。
純粋に理解出来なかったのだろう、魅耶は後になってそう振り返る。
興味があったわけではないが、そんな鳳凰と仲良くするのが楽しいという浅岡が何を考えているのかを知りたかったのだ。