曖昧ストライプ
そこまで聞いてようやく裕も理解したのか、あー、と応答した。
そしてそれは華倉も同じくだった。
「そういう事情もあったか……。どうしようか坂下? やっぱり帰る?」
取り敢えず缶ビールを4本持って、華倉も居間へと上がった。
そんな華倉の言葉に裕は首を横に振り、もうちょい居させてと返した。
「浅海と過ごすのは俺も嬉しいけど、今週は
ダメかな、と裕は困ったように曖昧に笑って浅海に訊く。
勿論ここまで言われて浅海に反対出来るわけがなかった。
李依のことは浅海も気に掛けていた。
自分がいない間に体調を崩してしまった裕のことを、李依もとても心配しているのだ。
春休み返上で取り組んでいた課題にようやく目処が付いた李依は今週末帰省してくる。
裕はそんな娘を、万全を期して迎えてやりたい。
気持ちは浅海も同じだ。
だから、浅海は渋々だがようやく折れた。
「わーった。でも日付変わる前には帰る。……くらいは妥協させてくれ」
「うん。ありがと」
ということで俺も呑まないわ、と裕は華倉を見て告げた。
華倉は残念そうな顔もせず、笑って頷いて返した。
んじゃ取り敢えずと華倉は魅耶と真鬼の前にビールを置いて行く。
これで最後ですと言いながら台所から戻って来た魅耶も食卓に着くのを見計らい、まず真鬼がビールを開けた。
「やけに豪勢だけどいつもこんななのか?」
渡された箸と取り皿を受け取りながら、浅海が魅耶に訊く。
首を横に振った魅耶に立て続けに問う浅海に、魅耶は笑顔のままきょとんと答えた。
「華倉さんの誕生日だからですよ? 他に何の理由があるんです?」
「何でそれを俺が知ってると思ってんだお前も」
知らねーよ、と浅海は思い切り眉を顰めて返した。
お前誕生日なのかよ、と揚げ出し豆腐を取りつつ浅海が華倉を睨む。
華倉はビールに口を付けたまま頷いて、お陰様でと答える。
「それでこのご馳走か」
食事に罪はないが等やや葛藤している浅海の隣では、裕が行儀よく頂きますと言ってから食べ始めている。
「意外と旨いよ、逢坂の作る飯」
「えー、お前調理実習滅茶苦茶だったじゃん?」
「大学時代の居酒屋バイトで鍛えられたんですよ。ブラックだったので辞めるに辞められず、嫌でも身に着いちゃったんですけど」
生き残ったがゆえの能力か、と浅海がやや引き気味に反応しながら応答した。