存在清算


 やっとの思いで葬ったのに、と華倉がげんなりした顔で呟く。
 真鬼はそんな華倉にふっと笑い、話を続ける。

「そこで問題になるのは、今後の私と創鬼の在り方だ。最鬼が欠けた状態でも不自由なく動ける状態にしなければならない」
「……あー、そうだな」

 座卓に頬杖を着いて聞いていた裕が、理解したように小さく頷く。

 今はパワーバランスが崩れた直後で、こうして篠宮総本山、そして憂巫女の傍で過ごすことで乱れを都度正し取り繕っている。
 しかし、いつまでもそれを続けるわけにいかないことは明瞭だ。

「私は良くてもお前は困るだろう、創鬼。薄蓮はくれんが待ってくれそうにない」
「ほんとにねぇ~」

 真鬼に指摘され、乾いた笑いと共に返す裕。
 でも、と笑いを消してやや真面目な顔付きをして続ける。

「浅海だけじゃない、俺自身そう思ってる。まだセミリタイアにだって早すぎる」

 このまま家に籠もってしまうにはまだやり残したことの方が多い。
 一度は捨てることも覚悟した命だが、こうして助かってみれば何のことはない、もっと生きていたいと思う。

 現金なもんだよなと裕は笑うが、真鬼は至って真面目な顔付きのまま「それが普通だろう」と呟いて見せた。

「具体的にどうするつもりなんですか?」

 相互に影響を及ぼす鬼神の関係性を、どのように独立させていくのか。
 魅耶の問いに、真鬼はやや伏し目になって首を横に振る。

「それは今から考えるしかない。現状況が正直、想定外のことだからな」

 最鬼を葬ることが本当に実現出来るとは思っていなかった。
 真鬼の言葉の裏にはそんな本心が隠れていた。

 具体例はないが、と話を続ける真鬼。

「イメージとしては、まず私と創鬼とに残る影響の繋がりを切り離す。それから創鬼は人間の方をベースに、鬼神の力を解かし馴染ませていくことは理屈としては可能なはずだ」

 創鬼は既に坂下裕という人間に完全転生を果たした状態である。
 しかし生身の人間以上の体力、運動神経を発揮することや、霊力の使用が可能など明らかに鬼神の力が全面に表すことも出来る。

 今、裕が満足に動けないのは創鬼の影響が強いせいだと真鬼は分析している。

 裕は以前の最鬼との遭遇で、無理矢理に創鬼の力を解放させた。
 そのときの直接の後遺症は声が出なくなることだったが、影響はそれだけではない。

「創鬼の力がまだ人間の肉体うつわに馴染めていないんだ。恐らく人間の肉体と自我の他に、創鬼の存在が同居している。お前の身体は常時満身創痍状態に近いと言ってもいい」

 真鬼にそう言われ、裕は驚く様子もなく、あー、と納得するかのような声を上げた。
 それはありそうと裕は頷く。

 幸い裕には創鬼が暴走するような兆候はなく、戦おうと思わなければ鬼神の力が表顕することもない。
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