カウントダウン


 このレシピ母さんに見せとこうよ、と華倉とやり取りして、部屋に戻った。

 机に置いてあったスマホの通知ライトが点滅している。
 桑嶋さんからのメッセージが入っていた。

『差し出がましいようですが、こちらなんかも便利です』という言葉に、高タンパク質の食材を使ったメニューが幾つか添えられていた。

 何故だろう。
 今自分が抱いている感情が分からない。

 そのメッセージを読んで、俺は何を思っているのか、把握出来ないことに恐怖心を覚えた。

 ここまでしてくれるのは、何故なんだろうか。
 凄いことと思う一方、やり過ぎではないか、とも考えてしまう。
 彼女には、俺にここまでする義理はないはずじゃないか。

 迷惑とまでは言わない、けど、これは喜ぶべきところなのかが分からない。

 どうしてだろう。
 俺は後1年も経たずに卒業する。
 大学からいなくなったら、桑嶋さんとの接点は消失する。
 まるで他人になるんだ、今までそうだったように。



 なのに何故、こんなに気に掛けてくれるんだ?





「好きだからじゃん?」

 やっぱり相談する相手を間違えたとしか思えなかった。
 春和はソファーに深く腰掛けて、さも当然のように答えた。

 いや、俺も話さなきゃよかったんだけど、CD返しに来た春和と言葉交わしてたら、気付いたら口が勝手に喋っていた。
 途中で我に返ってやめかけたんだけど、春和がそれをうまく阻止してくれやがった。

 ほんとお前は誘導尋問が巧いな、などと心の中で悪態を付いた。
 ……苦し紛れの悪足掻きにすらならなかった。

「俺、そういう話してたつもりないんだけど」
「いや、そういう話だよ。お前桑嶋さんのこと好きだから悩んでんだよ」

 春和はそう淡々と続ける。
 何で、とか、自分のことなのに春和に訊ねる始末である。

「まぁ、恋愛感情ってことにしといた方が話がラクとも言えるが」とも春和は告げて、それから本質へ入って行く。

「お前、好きな相手とか大事な相手のことを守りたい思いが強すぎるんだよ。守りたいからこそ、近付けたくない。自分が身を置いている環境に巻き込めば、絶対苦しませるからって」

 そういう想いを、桑嶋さんには抱いている。
 俺にはそう見えるけど、と春和は言った。

 守りたい気持ち。
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