カウントダウン
という理由から、スープ類を幾つか挙げられた。
それと、茹で玉子を食べれば、最低限必要なエネルギーは確保出来るはず、と。
『と、偉そうに言ってしまいましたけど……わたしは篠宮先輩のことはまだ分からないことの方が多いので、あくまで一般論です。良かったら参考にして、試してみてもらえれば』
そう、桑嶋さんは最後に締めた。
ありがとう、と素直に礼を述べてはみたけど、何となく後味の悪い時間を過ごしてしまった。
ふう、と溜め息を溢す。
ネット自体はよく活用しているけれど、こういうレシピを検索したことは殆どなかった。
調べてみると膨大な数が出て来るんだな、と画面の前でややフリーズする。
コンソメや中華だしを使った汁物なんかもあるようで、具材を変えれば飽きずに食べられる、か。
そんなことまでして、食べなくてもいいのでは。
「あ、菱兄ィ、そのサイトは注意した方がいいよ」
とうとう華倉が口を挟んだ。
吃驚して、おう、と短く声が漏れた。
さっきから何をしてるんだろう、という華倉の視線には気付いていたけど、声を掛ける様子はなかった。
しかし、サイト、という華倉の忠告に顔を上げる。
華倉は俺と同じように画面を見て、「ここのサイト、衛生基準ガバガバなんだ」と教えてくれた。
玉石混淆(ぎょくせきこんこう)過ぎるな。
「そうか、ありがとう」
じゃあ戻るか、と検索結果一覧のページに戻す。
流れでとうとう華倉が根本的な質問をしてくる。
「どうしたのいきなり、レシピ検索なんて」
さすがに食生活改める気になったの、と続けて来る。
……まぁ、母さんが華倉に愚痴る程度には、俺の食事内容は可笑しいらしい。
全く意識したことなかったが……。
「そう、だな……来年の今頃はもう働いてるわけだし」
「あー、確かにねぇ。食べてないとやってけなさそう」
何となく、後輩に心配されたから、とは言いたくなかったため、適当に理由を作った。
全くの嘘というわけでもないし、自分で言った後で、それはそうなんだよな、と思い直す。
そろそろ大学最後の夏休みを迎えて、それが明けたらすぐ入社説明会だ。
内定をもらった2社のうち、俺が選んだのは貿易関係の外資系商社である。
入ったはいいけど、結局は10年と経たずに辞めるのは分かっているから、もう片方の国内企業でも同じだったかも知れない。
選んだ最終的な決め手に明確なものはないだろう。