【夢小説】居てほしい人
そこで一旦切って、私はフレイグさんと視線を合わせて微笑む。
「……だから今度は、フレイグさんも着てくださいね」
私からの言葉に、フレイグさんは目を細めて頷いてくれた。
今日はまだキエルには会えてない。
今回の国際交流イベントの主催はキエルとフレイグさんだ。
キエルは分からないけど、そんな折角の機会にフレイグさんはこうして城で過ごしているなんて勿体無いと思っていた。
でも、そうじゃないんだよね。
こうして会話をしていて、私はやっとそのことに気付く。
これから何度もこうやって「次」を作り出していく。
今回は始まりに過ぎない。
だから、急がなくてもいいんだって。
急に黙ってしまった私に、フレイグさんは特に何も言って来ない。
ただ2人並んでソファーに座って、窓の外に広がるアトラスの風景を眺めていた。
正直、来て良かったのか判断しかねていた。
「……今日、ご迷惑ではありませんでしたか?」
私がそう切り出すと、何がです、とフレイグさんは訊き返す。
もしかして今日は、敢えて1人で静かに過ごすつもりでいたのではないかと。
今になってそんな考えが浮かんだ。
さっきは私が来たことを歓迎する姿勢を取ってくれたけど……やっぱり、突然の訪問は良くないよね。
自分の中で結論が出て、私は「ごめんなさい」とだけフレイグさんに告げる。
フレイグさんはグラスを置いて、溜め息混じりに「全く、」と呟いて開口する。
「何を考えていたかは聞きませんが、自己完結はやめていただけますか? 恐らく、貴方が思っているようなことではないので」
「でも、」
突然押し掛けてしまったことは事実だったから、それだけは謝らないと気が済まなかった。
フレイグさんはまた開き掛けた私の唇の前に、触れるかどうか際どい距離で指を差し出す。
吃驚して黙った私の顔を覗き込むように、フレイグさんは顔を近付けた。
では言い換えましょう、と前置きして。
「……僕の気持ちを、勝手に決められるのは不本意です」
微笑んではいるけれど、柔和さは形(なり)を潜めていた。
真剣な眼差しで私の心を捉えて続ける。
「貴方はこうして僕を思って此処に来てくれた。それをどうして、迷惑だと思えますか?」
1人静かに過ごすつもりだったのが事実だとしても。
貴方がいるのなら、優先順位は簡単に入れ替わる。