【夢小説】居てほしい人
フレイグさんは笑って、グラスを私の前に置きつつ、最近教わったんですと答えてくれた。
「それで、イザークたちには何と言って来たんですか?」
自分の分もテーブルに置くと、フレイグさんは私の隣に腰を落ち着けながら訊いて来た。
早速一口貰おうとしていた手を止めて、私は口ごもりながら答える。
「えーと、あの……実は……」
ふとフレイグさんのことを思い出して、話題に上げようとは思ったんだけど。
何となく返答が予想出来てしまって、「行かなくていい」と返されるのが嫌で。
「……ほぼ黙って、来ちゃいまして」
そう自分で言ってから気付く。
きっと今頃、2人とも大慌てだろう。
今日の案内はフレイグさんから任せられたことでもあるし……そう考えたら急に焦燥感を抱いた。
「あっ、だから……その! 良ければフレイグさんから2人に連絡……を、」
慌てて顔をフレイグさんに向けると、フレイグさんの視線は既に私に向けられていた。
何なら知らぬ内に膝の上の私の手に、彼の手が重ねられている。
言葉を切って黙り込んだ私に、フレイグさんは穏やかに呟く。
「そこまでして来て貰えて……僕、今とても浮かれてるんですよ」
口調は至って静かなもので、でもその眼差しに嘘はなくて。
静か過ぎて、そこまで至近距離じゃないのにお互いの呼吸音がはっきり聞こえそうな、そんな雰囲気だった。
「……なのでもう少しだけ、独り占めさせてください」
そんな嬉しそうに、言われたら。
イザークとルーファスへの罪悪感はなくならないけど、今この場を満たすフレイグさんの想いを最優先したくて、私は黙って頷いた。
アイスティーの氷が溶ける。
飲んだことのある味だなと思って感想を述べると、やっぱりベルガントの茶葉だった。
あの人には徹底的にマナーを叩き込まれたなぁなどと、世間話のような軽いやり取りを幾つか交わす。
「今着ているものが浴衣ですか?」
グラスから結露が落ちて、レンタルだから汚せないなとハンカチで拭いていた私に、フレイグさんが訊く。
フレイグさんも浴衣は初めて見るんだよね。
そうですと返す私に、フレイグさんはそのまま続ける。
「確かに、涼しげで美しい」
柔らかく笑うフレイグさんの眼差しに、私は一瞬大きく鼓動が跳ねる。
けれど浴衣の話だと思い出し、ですよね、と私から続けた。
「他にも色んな柄や色があるんですよ。本当に選び切れないくらいです。女性物ほど華やかではないですけど、男物もあって……」