【夢小説】居てほしい人
出迎えたフレイグさんは、私の顔を見詰めたまま暫く黙っていた。
無理もない、彼の中では私は今、弟たちに案内されながら国際交流イベントを楽しんでいるはずなのだから。
それでも私はこうして来てしまった。
彼が1人で過ごしているトルークビル城に。
「……貴方、何故此処に?」
ようやくフレイグさんから発せられた問い掛けの声には、やはり動揺が滲み出ていた。
随分勝手な、いや突拍子もないことをしていると自分でも思う。
それでも私は此処に来てしまった理由を、正直に伝えた。
「……今日は皆出払ってて、でもフレイグさんは当日休みを貰うと言っていたので……今、1人なんだな、って」
そう気付いたら、どうしても気になった。
「それで来てしまった、と?」
信じられないと言わんばかりに、フレイグさんは幾度か目を瞬かせる。
頷く私を見てから、はぁ、と1つ息を零したと思ったら、フレイグさんは肩をすくめて笑う。
「本当に、貴方の行動力には驚きを通り越して、もはや呆れてしまいますね」
フレイグさんに言われて、うっ、と気まずさを抱く。
自分でも最近ようやく己の行動力について疑問を覚えていたところだったからだ。
フレイグさんは次第に愉快そうに表情を和らげると、どうぞ、と玄関扉を更に開く。
「折角来てくださったのですから上がってください」
フレイグさんに招かれ、わたしは中へと入れてもらった。
普段よりも廊下に響く足音が大きい気がする。
何度か訪れているはずのトルークビル城なのに、今日は何だか知らないところみたいだった。
「紅茶でいいですか?」
お茶を淹れますねとフレイグさんが言うので、わたしも手伝おうとした。
けれどフレイグさんに制され、そのまま背中を押されてソファーに誘導される。
「客人に給仕させる真似はしませんよ」
待っててくださいとフレイグさんは言い残して、一旦リビングを出て行く。
いつも、兄弟たちが集まって過ごすリビング。
今日はとても静かで、窓も開いているけど人の声は全然聞こえて来ない。
皆、殆どの人が多分、街中での国際交流イベントに行っているんだろう。
「お待たせしました」
カラン、と涼やかな音と共にフレイグさんの声が戻って来る。
見ると、お盆には大きめのグラスが2つ乗せられていた。
「アイスティーですか」
此処では初めて見るなぁ、と素直な反応を見せた。