夢100 台詞ネタとか⑥
【何かのタイミングでトルークビル兄弟上3人の幼い頃のアルバムを見付けるヒロインちゃん(雑導入)。】
「ルーが産まれてすぐの頃みてーだな」
アルバムの中身を確認して、イザークがそう呟く。
今はもうその面影はほぼないけどそれと分かる雰囲気のある小さな赤子を抱く綺麗な女性――母親と、その腕の中を覗き込む子供。
こっちは多分イザークだろうな、と思いつつ、見るからに柔らかそうな寝顔のルーファスに無意識に笑みが零れる。
そんな内容の写真が数ページに渡って収められている、簡素なアルバム。
写真自体の枚数は多くはない。
けれど1枚1枚に愛しさと、撮った人の深い想いが込められていることが、何故かとても自然と伝わってくる。
「これらは誰が撮ったんでしょうか?」
訊きながらも、私は何となく気付いてはいた。
写っている数が一番少ないからだ。
「兄貴だろうな」
再び最初のページに戻り、イザークは淡々と答えた。
フレイグさんも写ってはいるけど、片手で数えられる数しか写真にもいない。
でもその数枚の中のフレイグさんも、柔らかな笑顔で、瞳にも喜びが滲んでいて。
「幸せそう……」
言っていいのか戸惑って、迷ったけれど口にしていた。
本当に吐息のような小声だったからか、イザークからも特に何も反応はなかった。
フレイグさんが撮ったらしい写真は特にお母さんが中心にいるものが多い気がした。
お母さんを真ん中に、イザークとルーファスと、それを愛情いっぱいの気持ちで写真に収めていたんだろう。
つらく苦しい立場に置かれ、この先更に心苦しい現実が待っているなど知らなかったこの頃。
それでもこの瞬間を切り取った、この写真の中には確かに、幸せを感じて表現する彼らがいた。
「みんな可愛かったんですね」
誰にでもそんな時期はあるだろとイザークが雑に答える。
ちらりと隣のイザークを見ると、やっぱりちょっと耳が赤かった。
照れてるんだ。
幼い頃の写真を見られるのは、確かにどこか面映い。
産まれたばかりのルーファスは勿論、まだまだ愛らしさの方が勝るイザーク。
そんな2人よりはずっと成長しているけれど、穏やかな瞳で小さな花のように微笑むフレイグさん。
何だか、私のことをいつも「可愛い」と繰り返していたお兄ちゃんたちの気持ちが分かるような気がした。
「おや、では今の僕はもう可愛くないですか?」
ふと頭上からそんな問いが聞こえてきた。
私はまだアルバムの写真に夢中で、顔も上げずにそうですねぇなどと声だけ返す。
「今のフレイグさんは可愛いというより、きれ……」
イザークが動いた気配に釣られて、私もはたと気付く。
背後を確認すると、にっこりと形のいい笑みをこちらに向けるフレイグさんがいた。
一拍遅れて驚いて、肩を跳ねさせて短い悲鳴をあげてしまった。
「居るなら声掛けてくれよ……お姫様もビビり過ぎだろ」
イザークも吃驚したにはしたらしい、フレイグさんと、私にもそう言ってきた。
済まないね、と笑うフレイグさんだけど、私たちが揃って覗き込んでいたものに気付くと、やや声のトーンを落とす。
それは、と訊ねるフレイグさんに答えたのはイザークだ。
「探し物の途中でお姫様が引っ張り出して来た。ルーが産まれたくらいの頃のアルバム」
ほら、とイザークがフレイグさんにアルバムを手渡す。
フレイグさんは何てことない様子で受け取りはしたけど、そう、とだけ、素っ気ない返事だった。
そう言えば探し物の途中でしたね、と私もようやく思い出し、慌てて立ち上がってみせる。
片付けとか、そういうことの途中でつい手が止まってしまうのは、皆同じなんだな。
アルバムをその手に収めたまま、何を探していたのかとフレイグさんが訊いてきた。
どうやら手伝ってくれるらしい。
この用事が終わったらアルバムと、この時の写真の話をフレイグさんに聞いてみようと私は考えながらイザークの探し物に戻る。
けれど予定外に手間取ってしまったこともあって、トルークビルを後にする頃には、写真のことはすっかり忘れていた。
2026/03/05