【夢小説】Honey in the Dark


「期待してんの?」

 ふっと突然リカの目が私の視線と噛み合った。
 口先を上げて挑発しているみたいな、楽しげな笑みだ。

 そんなことないよと返す私に、嘘吐け、とリカは顔を近付ける。
 ボタンを外していた指は私の顎へ。
 急に距離を縮めたリカの吐息に驚いて、ひゃ、と声が出ていた。

「目が言ってる。キスして欲しいって」
「……言っ、て、ないよ」
「言ってる。早くしないの、ってずーっと」

 リカはそこまで分かってるのに、顔を近付けたきりその先へは移らない。
 ただ私の顔を見詰めて、どうだと言わんばかりに笑っている。

 ……言わせようとしているんだ。

「リカちゃんの意地悪」

 恥ずかしさに私がぷいと顔を背けると、リカは上体を起こす。

「じゃあしなくていいか」

 もう寝ろとリカは言って、本当に行ってしまいそうだった。
 焦った私は咄嗟に、あ、と思って、慌てて手を出した。

 リカのジャケットの裾を掴もうと思ってた私の手は、しかしジャケットではなく空を掴む。
 逆に手首はリカに捕らえられていて。

「んっ、」

 リカが加減しつつベッドに倒れ込んで私に覆い被さる。
 その時には既に唇は塞がれていた。
 吐息と唾液とが混じり合って、私ばかりが気の抜けた甘い声を漏らす。

 しかし途中でリカが軽く顔を上げた。
 舌先から垂れてた唾液を指先で拭うと、成る程、と愉快そうに笑う。

「流石コロレ。まーた面白いアイディアぶち込んで来たじゃん」

 私の口の中にまだコロレさんのショコラが残っていたらしい。
 それに気付いたリカがそんなことを呟いた。

 リカの味覚は完璧なものだ。
 この人が美味しいと言ったものは間違いなく美味しい。
 こんな微かな量でも分かってしまうのはいつも凄いと思っているけれど。

「リカちゃん、やめて」

 私から否定の言葉が上がったことにリカが驚いている。
 私は今度は、自分からリカの頬を引き寄せてその唇を舐めてやる。
 完全に意表を突かれた顔をしているリカの目をじっと見て私は繰り返した。
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