【夢小説】再次相见了


 こちらを訝しげに見詰めてくる、温逐流ウェンジューリウの目。
 残念ながらその目には、見覚えはなかった。

「……お前は?」

 怪訝そうな声で呟く温逐流。

 覚えていないのか、と傷付きながらも、温央ウェンヤンはまた一歩彼に近付いて名乗る。

「私よ、同じ一門にいた……趙郷香ジャオシィァンシィァンよ」

 温央――趙郷香はそう訴えた。
 しかし、温逐流の反応はない。

 趙郷香は、温逐流と同じ一門の娘だ。
 二人はとある地域の田舎で、農作を営む一門の集落で近所に暮らしていた。

 しかし数年前。
 岐山きざん温氏の勢力が集落を飲み込んだ。

 命からがら趙郷香は母と共に逃げた。
 道中で一門は散り散りとなった。

 同族を捜す手立てもなく、自分達が食べていくことに手一杯の日々が暫く続いた。

 そんな暮らしの中で、風の噂で、趙逐流ジャオジューリウ温若寒ウェンルォハンの配下となったことを知る。

 趙郷香はその真偽を確かめるため、家僕として温氏に潜り込んでいたのだ。

「……本当だったのね」

 先刻から自分に向けられる冷ややかな視線に、趙郷香は切なそうに呟く。
 すっかり冷徹な表情に染まってしまった“趙逐流”を前に、趙郷香は躊躇いを抱く。

 連れ戻すつもりでいた。
 あの優しかった趙逐流が、暴虐王と悪名高い温若寒の配下に就いたとは、どうしても信じられなかったからだ。

 けれど、今こうして、数年ぶりにまみえたのは。

逐流ジューリウ……今からでも遅くはないわ。私と一緒に帰ろう!」

 ここまで来たのだ、と趙郷香は顔を上げ、温逐流に告げた。

 その声は震えていた。
 けれど趙郷香は真っ直ぐに、温逐流を見つめた。

 それでも温逐流の表情は変わらない。
 こちらを警戒しているような目付きで、睨むように窺うだけ。

「逐流、貴方きっと騙されているのよ。どうしてあんな暴君のために働くの? 悪い冗談でしょう?」

 趙郷香は自分の恐怖を誤魔化すためにも、意識して捲し立てた。
 一方的に話を聞く温逐流は、まだ何も答えようとしない。

 趙郷香は知らなかった。
 温逐流と温若寒の間に何があったのか。
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