【夢小説】Your Belief


 今まで彼がしてきたこと、彼にされてきたことがハイスピード映像の如く脳裡を駆け巡る。
 自分が彼の「大事な存在」である要素は見付からなかった。

 けれどフレイグさんは笑う。
 失礼だなぁ、と気の抜けた――正しくはもう力が入らない――声と共に。

「僕は、嘘を吐きませんと……言ったでしょう? 貴方を想い、慕っていたことも……事実でしたよ……」
「そん、な……」

 震える私の唇に、ようやくフレイグさんの手が届いた。
 弱々しい指先で唇の輪郭を、何かを確かめるように何度も撫でる。

「アカリ」

 フレイグさんの呼吸が一層弱まる。

 いつの間にか私の周りにはアヴィやイザークたちが集まって来ていた。
 状況を確認し合うような怒声のやり取りがすぐの頭上で行われているというのに、その声たちが遥か遠くの雑音のようにしか聞こえない。

 フレイグさんの顔から笑みが消える。
 表情が痛みに酷く歪んでいて、それ以前に顔から血の気が引いていくのが見て取れる。
 それなのにフレイグさんは起き上がろうとしているのか、私の唇に触れたまま、もう片方の手で地を押している。

「フレイグさん……動か、ないで、」

 無理に動いては駄目と私は制止するのだけど、彼は構わず私に顔を近付ける。
 フレイグさんの名前を呼び続ける私の唇を塞ぐように、指先を縦にして、置く。

「聴いて、アカリ」

 フレイグさんが告げる。
 その声に全ての意識が持って行かれる。

「貴方を求めたこの想いも、本物だった……。貴方に受け入れてもらえたら……僕も、解放される、気がして……」


 貴方が僕を愛してくれるのなら、もう、恨みも苦しみも――


「……、っ」

 フレイグさんが一瞬素早く動いたかと思ったら、私の視界は急に狭まっていて。
 フレイグさんの閉じた瞼と、長い睫毛、パラパラと落ちて私の額をもくすぐる金色の前髪に覆われる。

「愛していたよ、アカリ」

 それだけ告げるとフレイグさんは力尽きた。
 私の唇に、砂利の混ざる鉄の味を遺して。


 ――……
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