【夢小説】Velvet
「どうしたって貴方はアヴィしか見ていない。その事実に僕は、非常に腹を立てたのですよ」
紛れもない嫉妬だった――。
フレイグさん自身、そのことに困惑したけれどすぐに思い付いたらしい。
どうせ私をトルークビルへと連れて帰るのだ。
ならば、そのまま自分のものにすればいい。
「確かに貴方は能無しだ。軽率で浅はかで、何の具体性もない絵空事ばかり繰り返す……残念な姫だ」
フレイグさんは刺すような視線を私に寄越す。
他に何もされていないのに、その視線の圧だけで動きを制されているようだった。
「それでも……それでも僕は貴方を欲した。アヴィに向けられるその眼差しは、今後僕に向けられるべきだと」
そう結論付けるまで時間は掛からなかった。
フレイグさんは私との距離を詰める。
空いている左手で私の髪を撫で、一房掬い取る。
怯えて震えるだけの私の髪に、額に、フレイグさんは1つずつキスを落とした。
「驚いたよとても。まさか僕がこんな気持ちになるなど」
降らせ続けるキスの雨の合間に囁くように呟かれる。
「しかも憎たらしいはずの貴方に、感情をここまで掻き乱されて……これがそのまま、怒りに向けば良かったのに」
顔を上げてフレイグさんは私の顔を覗き込む。
私はその時には無意識の行動を取っていた。
考えるより先に顔を左右に振っていた。
「い……嫌です……」
自分でも聞き取れるかどうか分からない掠れた声。
その時の精一杯の拒絶だった。
けれどフレイグさんにそんなものが通用するわけがなく、フレイグさんは何かを待っているのか黙って私を見詰めたまま。
嫌。
こんな、こんな仕打ちだけは。
この人の言う事が全て正しくて私たちのやっていることが間違っていたとしても、この人だけは――
「助けて……ア、っ!?」
フレイグさんの両腕が私の後頭部と腰に巻き付けられて、私は上体全てを抱え込まれるように抱き寄せられる。
唇はきつく重ねられ、次第に深さが増していく。
ようやく自分の手を動かすことが出来た。