【夢小説】Velvet
トルークビル兄弟たちの母親の墓前で聞かされた「計画」。
そのことを考えると文字通り何も手に付かなくなる。
私は目が冴えてしまっていて、もう随分夜も更けたというのに、ベッドに腰掛けたまま窓の外を眺めていた。
灯りを点ける気も起こらず室内はとても暗い。
カーテンは開けているけれど空は暗雲で塗り潰されていて星の存在ひとつ分からない。
今の私の意識そのもののよう。
そんな私の様子見にと称して、わざわざ紅茶を持ってフレイグさんが部屋を訪れたのは数分前のこと。
「大事な話だったとは言え冷えたでしょう。まぁ、あの場所でするから意味があるのですが」
極力音を立てずにカップを用意し、香り立つ紅茶を注ぎながらフレイグさんは喋る。
テーブルを挟み私はベッドに、フレイグさんは向かい合うようにソファーに腰を落ち着けた。
私は怪訝な顔付きのままフレイグさんの手許を黙って見ていた。
あんな話の直後だ。
フレイグさん自身が目の前で淹れた紅茶など、口にしていいのか。
勿論私はこれ以上ないほど警戒していて、とうとうカップに手を伸ばすことすらしなかった。
フレイグさんはそれも承知だったと言わんばかりに涼しい顔をしていて、自分は静かに紅茶を飲んでいた。
「眠れませんか? ならば何か寝物語でもしましょうか?」
カップを置き、フレイグさんが私の顔を真っ直ぐ見据えて微笑む。
冷たい微笑みだ。
私は首を横に振り、そんなことよりと瞳で訴えてから口を開いた。
「先程の話……は、本気、なのですか?」
私からの問い掛けに、フレイグさんは微笑みを解かずに「勿論」と頷く。
「アダムも……他のご兄弟も皆さん、驚かれていたようですが……その、」
「でしょうね。今日あの場で初めて口にしましたから」
他の誰も知りませんでしたよ、とフレイグさん。
そんな大事(おおこど)を、この人はひとりで勝手に決めて。
「私は元より……アダムは、本当に困惑していましたよ……」
フレイグさんの望む「新しい夢世界秩序」の在り方。
その為にフレイグさんは、アダムと私に婚姻関係を結ばせるという。
何を考えているの。
私はともかく、アダムにまでそんなことをさせようなんて間違ってる……。
私の反抗的な視線に気付いてか、フレイグさんはふっと息を吐きながら笑う。