【曦澄未満】寛解
ね、と明るく誘う魏無羨に、いいのかい、と藍曦臣が笑みのまま訊き返す。
勿論、と胸を張る魏無羨の後ろから、藍忘機も小さく微笑んで頷いていた。
それがとても愛しくて、藍曦臣は思わず吹き出してしまった。
「では、お言葉に甘えるね」
***
「いやーでも良かったな本当に! 沢蕪君(たくぶくん)があれだけ笑ってるところ久々に見た!」
湯に浸かっているためでもあるだろうが、瞳をきらきらと輝かせながら、魏嬰(ウェイイン)は安堵と喜びを織り交ぜた声色で言った。
金光瑤(ジングァンヤオ)を喪って暫く、ずっと閉関を続けてきた藍曦臣(ランシーチェン)がその姿を見せた。
どうしても外せない仕事以外では初めてのことだった。
魏嬰と藍湛(ランジャン)は姿を見せた藍曦臣と夕飯を共にし、彼が閉じこもっていた間の出来事の数々を話して聞かせた。
とは言っても雲深不知処(うんしんふちしょ)の教えにより、喋っていたのはほぼ魏嬰ひとりではあった。
藍曦臣は口数こそ少なかったものの(教えは守るためだ)、魏嬰の話をとても興味深く、それでいて実に楽しそうに聞いていた。
魏嬰の言う通り、笑顔がよく見られた。
何はともあれ元気そうでよかったなー、と呑気に独り言のように感想を述べ続ける魏嬰に、ふと藍湛が声を掛ける。
藍湛に呼ばれ、魏嬰は顔だけを上に向け、自分の背後に佇んでいる藍湛の顔を捉える。
藍湛は魏嬰の髪を洗い終え、水気を拭おうとしていた。
魏嬰の髪の束を優しく布で包み、押し当てながら水気を取りつつ、話を続けた。
「夕食後、兄上から聞いたのだが、江(ジャン)宗主が兄上の許を訪れていたらしい」
へぇ、と魏嬰が意外そうに反応する。
確かに今日、江澄(ジャンチョン)が所用で雲深不知処に来ていたことは、魏嬰も知っている。
挨拶くらいしてやるつもりではあったが、藍湛に引き止められてしまっていたため、結局会えてはいない。
江澄は確かに気難しく付き合い方が厄介な男だが、自身の立場や仕事に関しては真面目に振る舞う。