【曦澄未満】寛解
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見送りは要らないと伝えたのだが、藍曦臣(シーチェン)は門まで出て来た。
全く、と不満そうに呟きながら歩いていた江澄(ジャンチョン)だったが、門から出る直前で足を止め、藍曦臣を振り向いた。
「長居をしてしまった。申し訳ない」
きっちりと頭を下げる江澄に、いいえ、と答える藍曦臣の表情は穏やかだ。
それに陰鬱な影はだいぶ消え去り、程好く力の抜けた緩やかな顔付きになっていた。
「今日は有り難う御座いました。お忙しいのに、私の為に」
「いえ……気にしないでください」
心配していたのも事実だ、と江澄は、喉まで出掛かったその言葉を寸でのところで呑み込んだ。
ではまた、と互いに頭を下げ、藍曦臣が顔を上げたときには、既に江澄は御剣で去った後だった。
静かな風が藍曦臣の頬を掠める。
「兄上」
暫くぼんやり景色を眺めていた藍曦臣に、藍忘機(ランワンジー)の呼ぶ声がした。
忘機(ワンジー)、と微笑みを浮かべて藍曦臣は応える。
姿を見せた藍忘機は、兄のその笑みを見て大いに驚いた。
次の言葉を紡げずにいる弟に、藍曦臣は構うことなく続ける。
「……暫く閉じ籠っていた間に、随分季節は移ろいでいたんだね」
匂いも、色も音も、光も、その全てが最後の記憶とはまるで異なっていた。
「沢蕪君(たくぶくん)~!」
ひょっこりと藍忘機の背後から、兎のように跳ねて魏無羨(ウェイウーシェン)が顔を出した。
お久し振りだね、と答える藍曦臣を見て、おぉっ、と魏無羨は声を上げる。
それからにっこりと笑って、嬉しそうに言った。
「やっと笑いましたね沢蕪君! 良かったなぁ藍湛(ランジャン)!」
ばふばふ、と藍忘機の肩を叩いて魏無羨は大喜びしている。
藍忘機はまだ目をぱちくりさせていたが、ふと真面目な顔に戻すと、うん、と小さく頷いた。
「迷惑を掛けたね」
まだ全快とはいかないものの、藍曦臣はそう告げた。
けれどこうして小屋から出られたのだから、きっとその日も近いだろう。
「そうだ沢蕪君、腹減ってませんか? 俺たち今から夕食なので一緒に食べましょー??」