死神にはなりません!
「燿、運んで」
「え。……えぇ!?」
真夜さんの指示に、一瞬きょとんとしてしまった。
生憎すぐに意味を理解して、俺は思わず場違いながら赤面する。
「俺がっすか? 未咲を?」
「当たり前でしょ! 優しく運んであげなさいよ!」
真夜さんはそう怒鳴るように俺に指示しながら、早速俺に未咲を託す。
俺は未咲の腕に触れ、取り敢えず熱はないことを確認していた。
俺が未咲を運んでいる間、真夜さんは上層部に連絡を付けに行くと言う。
女部屋の棟に俺まで入るには許可が要るのだ。
真夜さんが先に部屋を出て行く。
俺は未咲の手を掴んで、未咲を案じた。
「頑張れ。きっと良くなる」
そう、ありきたりの言葉ではあったけど、本当に心からの言葉を投げかけたつもりだった。
しかし未咲はそんな俺の顔を見ずに伏せたまま。
相当つらいのだろうと勝手に思った俺は、そのまま未咲を支えて立ち上がろうとした。
「未咲、戻ろう」
声を掛けて未咲を立ち上がらせる。
しかし未咲は動いてくれなかった。
未咲、と数回呼ぶが、返答もなく。
どうしたんだと思って、俺は未咲の顔を覗き込もうとする。
未咲の顔は前髪で隠れてよく見えない。
「未咲?」
黙ったままの未咲。
けれど次第に聞こえてくる叫び。
それは未咲の心の奥底に溜められた、腐った想い。
「……めて、もう。そんなこと言うの……」
「え?」
未咲の声が少しずつ大きくなる。
俺が怪訝そうな表情でそんな反応をしてしまったことも、きっかけだったかも知れない。
「っもう、あたしを追い詰めないで……っっ!!」
未咲はいきなり顔を上げて俺にそう叫んだ。
突然のことに驚きながら、俺は戸惑う。
一体何のことを言われているのかさっぱり分からなくて。
けれど、そんな戸惑う俺を無視して未咲は泣き出す。
「頑張ってる、んだよ! これ以上無理なところまで! でもいつまで経ってもこうなの! あたしなんかじゃ、これ以上にはなれないの!」
「み、さき?」
それは多分、未咲が受けて来た非難や嫌味。
未咲は自分のことを落ちこぼれだと思っている。
だから何をされても、どんな酷いことを言われても、溜め込んでしまった。
それが、今、表面化して肥大していく。
――背後の影の手によって。
俺はそれに気付いて、未咲を慌てて落ち着かせようした。
このままではその影がどうなるのか分からずに怖かったせいもある。
しかし未咲はそんなことには全く気付いていない。
惨めな自分を、無力な自分をどんどん吐き出す。
「この程度なの、あたしは、何やったって駄目なんだ! 誰に認められたってそんなの意味無いの! あたしはあたしが、大っ嫌いなんだからぁ!」
未咲の負のエネルギーを、その影が満面の笑みで吸い取っていく。
これは、一体何だ。