死神にはなりません!
にっこりと笑って出迎えられることに安堵感をも覚える。
俺はそんな嬉しさと一緒に、何故か罪悪感を感じてしまう。
そのせいで曖昧な表情で曖昧な返答になってしまった。
嬉しいはずなのに、何だろうか。
もやもやしたまま自分の机に向かった。
「未咲、まだなんすね」
ぽつんと空いている未咲の机を見ながら、俺は独り言のように呟いた。
真夜さんは既に作業に入っていたが、そうねぇと顔を上げた。
「珍しいわね。ちょっと寄ってみればよかったかな」
真夜さんがそんなことを呟いていると部屋の扉が開いた。
「起きたかー……って未咲!?」
入ってきた未咲を見て真夜さんが驚いていた。
俺もその声に釣られて顔を上げる。
すると。
「未咲!?」
とても顔色が悪く具合の悪そうな未咲が、壁に縋るような体勢でそこにいた。
「未咲! どうしたの!」
慌てて椅子から立ち上がって真夜さんが未咲に駆け寄る。
未咲はその真夜さんの姿を見ると少し安堵したのか、ちょっとだけ笑った気がした。
しかし相当つらいのか、すぐに苦しそうな表情に戻ってしまう。
そのまま床へ、膝から崩れ落ちる。
未咲、と叫ぶように未咲を呼ぶ真夜さん。
未咲は呼吸も荒く、俺は最初、熱でも出しているのかと思えた。
でも、何やら様子が可笑しい。
何……だろう。
「真夜さん」
「ちょっと燿、何突っ立ってんの! 早く誰か呼ん」
「……あれは、何でしょう?」
俺は未咲の背後にうっすらと見えている、もやりとした影を指差した。
俺の言葉に、え、と真夜さんも視線を上げる。
未咲の背後、初めは未咲の影だと思えた。
しかしここの灯りはそれほど強くないし、第一こんなにくっきりとは現れないはず。
じゃあ、何だ……?
未咲の背後にぴったりとくっついている、真っ黒くはっきりとした影。
「ま、やさ……」
「っ、未咲!?」
乱れた息遣いで未咲が喋り出す。
真夜さんがそれに気付き、未咲を抱えたまま不安そうに返事をした。
「どうしたの未咲? あんた……」
真夜さんが理由を訊ねるが、未咲はただ力なく首を横に振るだけ。
どうやら理由が分からないらしい。
未咲のか細い声による話だと、どうやら目覚めたとき既に身体が重たく、顔色も真っ青だったという。
何とか這い蹲ってここまで来たのだが、本当は動くだけでも精一杯とのこと。
「ば、連絡しなさいよ!」
真夜さんは心配のあまり、つい強い口調で未咲に怒鳴る。
未咲の声は小さすぎて、ごめんなさいと動く口元しか見えなかった。
その間にも俺は未咲の背後の影を見ていた。
可笑しい、明らかに。
だってこの影……勝手に動くのだ。
ゆらゆらと蜃気楼のように輪郭が左右に波打つ。
そして時々、腕のようなものが未咲を狙ってるかのようで。
じっと注意深く影を見張っている俺には気付かず、真夜さんは未咲の身を案じている。
「とにかく、一旦部屋戻るわよ! そんな状態じゃ動くだなんて」
真夜さんはそう結論付けて、俺を振り向く。