死神にはなりません!
『お前は死に切れてないせいで、鎌を目覚めさせるだけの死神のエネルギーが足りていないんだ。だから俺は出て行きたくても出られず仕舞いだったのだ』
『じゃあ何で今になって?』
やれやれと肩を落とす鎌。
いやそれは俺のセリフだよと心の中でツッコみながら、俺は続きを催促。
すると鎌からは予想外の答えが。
『あん、そりゃあいつ、燐とか言う死神のお陰よ。あいつのエネルギーに当たることによって、俺の中に純粋な〝死神〟のエネルギーが入り込んできた。だから出て来れたのよ』
な。
取り敢えず、絶句。
俺は軽く眩暈を起こしそうになった。
まじか、これ燐さんのお陰なの?
嫌だー……事実知られたら絶対殺されるパターン。
などと考えて黙り込んだ俺に、ん、と鎌が気付く。
『どうした? 嬉しくて泣いてるのか』
『そんなわけないだろ。どっちかっつうと哀しくて涙が出そうだよ』
『何で?』
事情を知らないはずはないと思うんだけど、鎌、本気できょとんとしている。
これは黙っておいた方がいいなぁ、と俺はそう決める。
うん、とひとり頷く俺に、鎌が続けた。
『でも、持続させられるかどうか保証はねぇぞ? この先の扱い方によってはエネルギー切れということは有り得る。ま、今回の怨霊退治くらいなら間に合いそうだがな』
そう、ニッと笑って鎌が得意気に告げた。
今回の怨霊。
その言葉に、俺はゆっくりと鎌に視線を送った。
鎌は何も知らないような表情で俺を見返しているだけ。
その瞳には何か、隠されているような気もした。
もしかして俺は試されているのかも知れない。
少しだけ目を伏せて、それから鎌に向かって開口する。
『……もう決めたんだ。躊躇わない。だから、俺はやるよ』
そう、鎌を見据えて俺は宣言した。
すると鎌は一瞬驚いたような顔つきになったけれど、すぐに愉快そうに笑った。
『そう来なくちゃ』
嬉しそうな鎌の笑顔はちょっと不謹慎だと思ったけど、俺にとっても有り難かった。
そう、やらなきゃいけないんだ。
母さんへの罪滅ぼし。
自分の中の罪悪感も、此処で清算しないと。
そのために今こうして此処にいられるんだとするならば、こんな機会は二度とない。
これは奇跡なんだ。
夢でもいい。
嘘でもいい。
俺は、母さんと仲直りがしたい。
気付くと目が覚めていた。
真っ白い天井を見詰めて、息を長く吐く。
起き上がると身体中が硬くて、バキバキと音がした。
俺動けるかなぁとかちょっと不安になる。
洗濯の済んだ制服を取り出して着替える。
再び顔を洗って頬をチェック。
やや腫れてはいるけれど、そんなに目立たないようだった。
よし、と自分に気合いを入れて、部屋を出ようとした。
しかし鎌を忘れたことに気付いてベッドに戻る。
ベッドサイドテーブルの鎌を取り上げると、確かめるようにぎゅっと握り締めた。
部屋を出て仕事に向かう。
相変わらずまだ異様な目で見られるけど、そんなもの気にしている場合じゃないと思うとさほど気にならなくなる。
「おはようございます」
部署に着いて挨拶をする。
いたのは真夜さんだった。
「お、早いねぇ。ちゃんと寝た?」
「はい、まぁ大体」