死神にはなりません!
ばっさりと真夜さんは俺の決断を斬り捨てた。
は、と思って、俺は泣きっ面のまま顔を上げる。
真夜さんはむすっと不貞腐れたような顔をして、俺を見下すように見てきた。
「聞いてて欠伸が出るわ。あんた、何勘違いしてんの?」
「……え? な、何が」
腕組みをして真夜さんが俺に言葉を続ける。
戸惑う俺、今回は言い返すこともままならない。
「燿。言ったでしょう、これは機会なんだと。罪だという意識があるのなら、ちゃんと償いなさい。今燿が抱いている罪の意識は、償う覚悟のある者だけに与えられる正常な感情なのよ」
真夜さんの言葉には真実と重みがあった。
それははっとする、目の覚めるような鋭い言葉だった。
俺は目を見開いて真夜さんを食い入るように見詰めた。
真夜さん、と不安そうな未咲の声に続いて、真夜さんがまた口を開く。
「燿、必要以上に恐れないで。自分が悪いと思えば思うほど、確かに苦しくなるわ。でも、それは同時に、相手のことがそれほど大事だという証でもある。ならば……やることはひとつでしょ?」
そう言いながら真夜さんはしゃがみ込む。
俺と視線を合わせるように俺の顔を覗き込んで、ふっと微笑んだ。
感情が昂ぶって何も言い出せない俺の左手を取って、真夜さんはそっと自分の手を重ねた。
その真夜さんの掌の温かさに緊張していた心が解れていく気がした。
俺の肩に添えられた未咲の手にも力が入る。
「自分が犯した罪がどれほどのものだったか。燿はもう充分思い知ったでしょ。だから堂々としてていいの。堂々と、お母さんに頭を下げましょ?」
真夜さんの言葉に俺は頷いた。
何度も、涙を堪えて黙ったまま、首をぶんぶんと縦に振った。
俺、許されていいのかなって迷いもあった。
でもそれ以上に、俺は母さんに謝りたいんだと気付く。
だから、怖いけど俺はやると決め直す。
俺が顔をちゃんと上げて真夜さんを見詰めると、真夜さんも力強く微笑んだ。
「ごめんなさい……有り難う、御座います」
「いいのよ。燿なら出来るって信じてるから」
真夜さんに感謝の意を告げると、真夜さんが手をひらひらとさせて答えた。
そっか、俺、信用されてるのか。
それが妙に意外で、俺は茫然としてしまう。
「そうだよ燿! あたしたちが一緒だもん! きっと大丈夫だよっ!」
そんな俺に、がばーっと抱き着く未咲。
俺は吃驚して、思わず「ぎゃっ」と叫んでしまった。
しかし未咲は気にせず俺の首にぎゅうと腕を絡ませて、俺を励ましてくれた。
些か手荒いけれど、それはとても頼もしかった。
本当に申し訳ないなぁと思って、もう一度謝った。
こんなに俺のこと思ってくれている相手が近くにいるのに、俺はひとりで塞ぎ込んでいた。
それがちょっと恥ずかしくなるくらい、真夜さんと未咲は温かい。
温かくて寛大で、そして強いんだ。
「さて、じゃあ取り敢えず寝ますかー。だいぶ戦っちゃったしねぇ」
「うあー、確かに……身体中痛いのはそのせいですねー」
ぐぐーっと伸びをして、真夜さんが俺たちに告げた。
そうか、そう言えば今は就寝の時間だった。
本当、何から何まで俺の面倒に付き合ってくれて……感謝し切れない。
また泣きそう。
「燿、部屋覚えてる? 行ける?」