死神にはなりません!


 俺たちと燐さんの間に真夜さんが割って入った。
 まず物理的に双方を引き離すと、真夜さんは先に燐さんに意見する。

「燐くんの怒りも分かるけど、燿は死神じゃないのよ。それに、あの怨霊の集団を率いているのが、亡くなった燿の母親だって知ったのは今の今なの。それだけは嘘じゃないわ」
「……」

 いろいろ、他にも説明しなきゃいけないことはある。
 でもまずはそれだけ、真夜さんは燐さんに伝えた。

 燐さんは納得したくなさそうな表情で俺を見て、そして黙ったまま頷いた。
 それから真夜さんが俺たちの方へやって来る。

「まず未咲。何でもかんでも燐くんに毒吐かないこと。それに燿。気持ちはわかるけど……やってはいけないことしたわね」

 未咲にも俺にも真夜さんは冷静な判断を求める。
 俺は何かを言い返したかった。

 でも、心の中はぐちゃぐちゃで、悔しいのやら哀しいのやら、何だか分からなくなっていた。
 泣きそうな俺は、俯いて黙り込む。

「済みません……」

 未咲は大人しく謝っている。
 真夜さんは俺たちの頭を順番に撫でてから、燐さんに話し掛ける。

「どうする? 閻魔様への報告とか……必要?」

 真夜さんの言葉に、ああ、と燐さんが頷いている。
 というのも。

「閻魔大王より、話があるそうだ」

 燐さんのそんな言い方が、今までよりも控え目なものになって。
 何だろうと思って、顔を上げる。

 視界にその人の姿が入ってくる。
 その姿に慌てて真夜さんと未咲が頭を下げた。

 閻魔大王だ。

 俺は顔を上げたまま、じっと閻魔大王の顔を見詰めていた。

「……報告が遅れてしまったようだな」

 わざとらしい閻魔大王の喋り方。
 俺は、その時気付いてしまった。

「まさか、あんた」

 相手が閻魔大王だということも忘れ、俺は閻魔大王に向かって怒鳴るように質問を投げた。

「あんたまさか! 相手が俺の母さんだって知ってたのか……っ!?」

 立ち上がって閻魔大王に掴み掛かろうとする。
 しかし、寸でのところで燐さんの手が俺の腕を拘束する。
 俺はそれでも閻魔大王に向かって手を伸ばした。

「このこと知ってて! 俺にっ……俺に母さんを殺させようと仕向けたのか!!」
「馬鹿者っ! 慎め!」

 閻魔大王に向かって暴言を吐く俺に、燐さんが凄い形相で怒鳴り付ける。
 しかし俺の怒りは収まらず、閻魔大王にまだ文句を言いたくて仕方なかった。

「ふざけんなよ! 何で俺が母さんを殺さなきゃなんねぇんだよ!!」

 燐さんの腕に抑えられながら、暴れる俺。

 ふざけんな。
 本当にそう思えて、同時に涙が出ていた。

「な、んで……そうなるんだよっ……!」

 俺が人間界に戻るためには、母さんを殺さなくちゃいけないだなんて。

 俺はそのまま膝から崩れて、地面に座り込んだ。
 燐さんの腕が俺から離れたけど、もはや閻魔大王に掴み掛かる余力などなかった。

「……燿。奴らは既に人間ではない。情は無用だ」

 ふと落ちてくる、閻魔大王の声。
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