死神にはなりません!
手が、差し出されていた。
見たことのない人影があって、その人物が俺に手を差し伸べている。
この手を掴めと言われているようだった。
俺はまるで引き寄せられるように燐さんのエネルギーの中へ入っていく。
そして、その中で待っていた人物の手を掴んだ。
「――――……っ!」
一瞬、音が消えて。
途端、中から破裂したかのように燐さんのエネルギーの塊が効力を失っていく。
「何……?!」
それを見ていたらしい、燐さんのざわついた声がした。
その燐さんのエネルギーの中から再度姿を見せた俺を見て、真夜さんと未咲が動揺するかのように驚いていた。
俺の手には鎌が持たれていた。
筒状ではない、未咲や燐さんが持っているものと同じように、背丈以上の高さで鈍く銀色に輝く刃を持つ鎌が。
俺はその鎌を両手で掴んで、茫然とその場に立っていた。
何が、起こったんだ……?
「っ、あ、逃げた!」
一番に我に返ったのは真夜さんだった。
ふと空を見て、怨霊の群れがいなくなっていることを叫ぶ。
しかし俺と燐さんは、その真夜さんの言葉には意識が向いていなかった。
「貴様! 一体どういうことだ!?」
燐さんが俺に向かって怒鳴り付けた。
燐さんのその声で俺もはっとして、え、と顔を上げる。
すると既に燐さんは俺の目の前に立っていて腕を振りかざしていた。
頬に鈍痛が走る。
俺はそのままバランスを崩し、背後に倒れてしまった。
「っ、燿!」
それを見ていた未咲が慌てて俺の許へ飛んでくる。
そして燐さんを見上げて怒鳴った。
「馬鹿! 何してるのよ!?」
「退け未咲! こいつのせいで怨霊を取り逃がしたではないか!」
「だからって燿に八つ当たりしないで!」
未咲が俺を庇って燐さんに喧嘩を売っている。
燐さんの言い分が多分正しい。
でも俺は燐さんに殴られた左頬を抑えながら、燐さんを見上げる。
「……何だその目は。文句でもあるのか?」
俺が睨むように見上げたことに気付き、燐さんが怒りを露わにして低い声でそう告げる。
俺は自分のしたことが、間違っているとは思えなかった。
「いけませんか? 自分の母親を、守って」
「何?」
俺の反論に、燿、と未咲が慌てて諌めてくる。
しかし俺は勢いよく立ち上がって、燐さんに詰め寄った。
「あれは俺の母さんなんだ! 幾ら何でも、殺されるところをただ見てられるかっ!」
俺はそう燐さんに言い返したんだけど、燐さんには火に油という感じでしかなく。
再び、俺は燐さんに殴られて倒れ込む。
いい加減にして、と未咲が泣きそうな声で怒鳴った。
そんな未咲の怒鳴り声で一旦は燐さんが冷静になる。
しかし相当頭に来ているらしい、溜め息を吐いて俺を詰る。
「お前が来てから碌なことがない。もしかしてお前、怨霊と通じているのではないか?」
「なっ!」
燐さんのそんな発言には俺も未咲も頭に来た。
それだけはない、と言い返そうとしたのだが。
「ちょっと仲間割れやめなさい! 燐くんも大人げない!」
38/38ページ