死神にはなりません!
「そうはさせないんだから!」
しかし未咲が母さんに反発して、母さんに向かって行ってしまう。
馬鹿、と真夜さんが未咲を引き留めようとしたのだけど、未咲の方が速く母さんの真ん前まで飛んでいく。
しかし。
「っきゃ……!?」
ぶわぁ! と母さんが再びあの黒い竜巻を発生させた。
危ない、と叫ぶ真夜さんの声が先か否か。
未咲を竜巻に触れさせない速さで、誰かが未咲を助け出した。
燐さんだ。
未咲を抱えて、燐さんが怨霊の群れから離れたところに着地する。
げ、と相変わらずの態度の未咲にも、燐さんは冷静に対応した。
「あれは未咲では手に負えない相手だ。此処に居ろ」
燐さんはそう未咲に告げて彼女を降ろすと、怨霊の群れの方を向いた。
そして、鎌を構えて集中する。
俺も真夜さんと一緒に地面に降りて、その様子を見ていた。
まさかと思いながら。
こういうときの「まさか」は大体当たってしまう。
燐さんの実力は少し前に見たばかりだ。
まずい……!
俺は鎌を構えて、力を溜めている燐さんと対峙する母さんの許へ走り出す。
燿、と真夜さんの制止する声も敢えて振り切った。
燐さんの周囲に風が渦を巻いて発生する。
母さんもそんな燐さんの力を感じたらしい、表情を真剣なものにして身構えた。
もしかしたら母さんは太刀打ち出来たのかも知れない。
でも、俺は怖かったんだ。
「貴様だな。以前から霊界を脅かす怨霊は」
静かに燐さんが開口し、母さんに訊ねる。
しかし、そのときの燐さんの力は既に相当集まっていて。
いつ母さんに危害を加えるか、俺はそればかり気に掛かっていた。
「まぁ、そういうことになるのかしら? でも別に脅かそうなんて思ってないわ。仲良くしましょってお誘いよ」
にっと口角を上げて母さんが答えた。
しかし、燐さんは元より会話をするつもりはなかったらしい。
返事はせず、鎌を持ち直すように一度回して見せた。
そして。
燐さんが集めた力を怨霊の群れ……母さんに向かって、放つ。
俺はそれと時を同じくして叫んだ。
「――やめろぉっ!」
燿、という驚いた未咲の声。
俺は後先何も考えずに行動に出た。
燐さんの近くまで走っていくと、持っていた筒状のままの鎌を燐さんに向かって投げ付けたんだ。
「なっ……!?」
驚いて、燐さんは俺が投げた鎌を払おうと腕を動かす。
すなわち、鎌をこちらに向けて振るったということ。
勿論力の方向も変わる。
「燿っ!」
母さんをはじめとする怨霊たちに向けられていた燐さんの攻撃が一斉に流れを変える。
怨霊の群れを一撃で抹消するほどの膨大なエネルギーが、俺を目掛けて襲ってきた。
咄嗟に叫ぶ、真夜さんと未咲の声。
俺は驚きのあまり、動けずにその場に突っ立っていた。
けれど。
その燐さんのエネルギーの中には、先ほど俺が投げ付けた俺の鎌も流れに汲み込まれていて。
鎌が一緒になって俺の許へ飛んでくる。
俺はそれを見ると我に返って慌てて逃げようと踵を返す。
しかし一瞬何かの声が聞こえて、俺はもう一度振り向いた。