死神にはなりません!
元蝙蝠の真夜さん。
今はエリート死神として活躍しているけど、純粋に生粋の死神からすればやっぱり「異端者」なんだろう。
「悪いこと言っちゃったか」
「……かも」
俺の呟きに未咲も同意した。
俺は謝らなきゃって思ったんだけど、未咲には引き留められる。
何、と返す俺に、未咲なりの配慮。
「やみくもに謝っても……事実を突き付けるだけになることもあるよ。ここは何事もなかったようにしよ?」
「え……いいの?」
未咲の言い分にも理解は出来る。
でもそれでいいのかなと俺は引っ掛かってしまう。
暫しふたりで黙ったまま考えていたけど、先手を打ってきたのは真夜さんの方だった。
「ふたりー、いつまで内緒話してるー? ほら、仕事仕事」
真夜さんが何事もないように笑って、扉を開けて出て来た。
はい、と未咲が先に返事をして、俺に振り向いて目配せする。
いい、みたい。
俺もそういうことにして頷くと、未咲と一緒に部屋に入った。
「え。俺にも仕事あるんですか?」
部屋に入った途端、俺の机を用意したと真夜さんに言われた。
その上には何やら書類の山がふたつも積まれていた。
真夜さんは頷いて「勿論よ」と答える。
「怨霊が出て来るまでは、時間あるってことでしょ? 確かに鍛錬も必要だけど、折角の人手なんだから使わせてもらうわよ」
そうはっきりと宣言される。
まじか、と俺は書類の山を見詰めながら、苦笑いを浮かべていた。
「仕事のやり方は未咲に聞いてね」
真夜さんはそう告げると自分の作業に入ったようだった。
物凄い集中力だということが、傍目でも分かる。
既に話し掛けられない雰囲気だった。
仕方なく俺は未咲に話を振る。
「……何をするのかな?」
「えーっと、ちょっと見せて」
未咲に指示されて、俺は山の一番上の書類を渡す。
未咲はそれを見るとふむふむと考えて俺に説明してくれた。
「これはね、未処理と処理済みの仕分けだね。魂の回収が出来ている人はこっち、まだの人をこっちに分けて、他部署に回すの」
「……え」
未咲がとても自然にそんな風に言うので、俺は思わずフリーズした。
それは当然なんだけど、俺の感覚ではとてもじゃないけど平然としていられない事実だ。
要するに……既存の死者と、これから死ぬ予定の人間とに振り分けろ、ってことだ。
動きの止まった俺に未咲が気付く。
しかし未咲は、何故俺がフリーズしているのかまでは分からない様子だった。
きょとんとしている未咲を、俺はどう思っただろうか。
非道とか冷酷とか感じてたような気もする。
でも。
「燿。此処はそういうところよ」
不意に真夜さんの声が飛んできた。
はっとして俺は真夜さんの方を向いた。
真夜さんは俺に視線を向けずに、手元の作業を進めながら続ける。
「あんたも今は一応死神みたいなもんなんだから、ビビってないで」
そんな真夜さんの言葉で、あ、と未咲も気付いたらしい。
未咲が不安そうに俺を見てくる。
俺はそんな未咲からも真夜さんからも視線を外し、やや伏せ目になった。
此処はそういうところ、か。
俺は黙って、そのまま書類の仕分けに移った。