死神にはなりません!
「何ってことしてくれたんだお前! 俺は今日入学式だったんだぞ! どうしてくれんだボケェ!」
「だだだ、だから謝ってるじゃ……」
「謝って済むかゴラァ!」
怒りが頂点に達して俺はもはや鬼の形相で怒鳴り散らす。
未咲はと言うと、本当に悪いことをしたと思っているのか、しょぼくれてしまっている。
今にも泣き出しそう。
いや、泣きたいのは俺だよ。
しかし、初対面の見知らぬ女の子を会って早々泣かすというのも気が引けた。
俺は我に返ると、ちょっとトーンダウンして呟く。
「……済まん。ちょっと責め過ぎた」
取り敢えず地面に直に座り胡坐を掻く。
そんな俺の真正面で正座をして、未咲は首を横に振った。
「いいの。分かってる。こんなんだからあたし……」
未咲がそこまで言い掛けて言葉を止める。
そしてもう一回、ごめんなさいと頭を下げてきた。
とは言っても。
「まじかー……どうすんの俺。まじでこのままお陀仏なん?」
はぁ、と盛大に溜め息を吐き、俺は頭を抱えた。
あれだけ頑張って死に物狂いで受験突破したのに……高校に一日も通えず終いって。
こんなんあり?
「なぁ、そんで此処は結局何なの?」
半ばどうでもよくなって折角だから死後の世界を知ろうと思った。
未咲に訊ねると、未咲は気まずいのか俺を見ずに話す。
「此処は、あたしたち死神が刈ってきた魂を裁く場所。霊界って言えば分かると思う」
「……あー、閻魔とかがいるとこ?」
俺はそう納得しながら、はっとする。
今、死神って言ったな。
「未咲は、死神なんだ?」
俺は浮かない表情の未咲を見て確認する。
未咲は頷いて、でも覇気のない声で返した。
「一応ね。でもあたし、ほんとに落ちこぼれなの。出来損ないで有名なくらい。今回だって……ああもうほんと!」
未咲は相当悔しいのか、ぐしゃりと自分の頭を両手で掻く。
俺はそんな未咲を見ていると、それ以上文句は言えなくなった。
未咲もわざとじゃないしな。
間違えたくてやったわけじゃない。
やる気だってあるのに空回りしてしまう……。
健気なんだろうなぁ、などと感心してしまった。
だからって俺が死んだことには変わりないんだけど。
はぁ、と俺と未咲はふたりして同時に溜め息を吐いていた。
「……気が合いそうだな」
俺がそう軽くへらっと笑って未咲に告げる。
すると未咲、本当に泣き出しそうな、やや抑え込んだ声で返す。
「そんなこと言わないでよぅ~っ! 期待しちゃうからぁーっ!」
しかし、とうとう泣き出した。
失敗、今回が初めてじゃないんだろうなぁ。
めそめそ泣く未咲。
そんな落ちこぼれの死神を見て俺は呆れてもよかった。
でも何だろう、放っておけないと思ってしまうのは。
ふうとひとつ息を吐き、俺は未咲を呼ぶ。
「泣いてても状況は変わらねぇぞ」
「~~だってぇぇ」
俺の言葉に、未咲は涙でぐちゃぐちゃの顔を上げて見せる。
なんて酷い顔を、と思いながら俺は続けた。