死神にはなりません!


 男性は声を掛けられると思っていなかったらしい、本当に吃驚して戸惑っている。
 俺は苦笑いを浮かべながら訊きたいことだけ話す。

「えっと……真夜さん、っていう女性が所属している部署って、ご存知ですか?」
「ま……あー、蝙蝠淑女バットレディのところか」

 蝙蝠淑女。

 真夜さんはそんな呼ばれ方をしているのかとちょっと驚いた。
 男性は俺に淡々と真夜さんたちの部署を教えてくれた。
 俺は軽くお辞儀をして礼を告げると、さっさと教えてもらった部署へ向かった。

 周囲の視線が結構痛いのだ。
 何だあいつ、という声が聞こえなくなるくらいの速さで、俺は階段を上っていく。

 確か四階の角部屋って言ってたな。
 俺が走ってその部屋に向かっていると、ちょうどその部屋の扉が開いた。

「あっ、燿?」

 出て来たのは未咲みさきだった。
 俺は未咲の顔を見ると途端に安堵した。
 よかったー、と俺はその駆け足のまま未咲の真ん前まで到着した。

「よくうちが分かったねぇ。そろそろ迎えに行こうかなんて真夜さんと話してたんだよ」
「そうなの? いや、呼ぼうにも部屋番号分かんなくて、内線も使えなくてさ」

 ははは、と笑いながら状況を説明する俺の声に真夜さんも気付いたらしい、扉の向こうから顔を見せる。

「お、すっきりしたじゃない」

 俺の顔を見て真夜さんは笑った。
 ども、と会釈をして、俺は未咲と一緒に部屋に入った。
 近くにあった椅子に座って、真夜さんにも未咲にしたように事情を説明した。

「あー、そうか。教えてなかったっけ。ごめんごめん」
「いえ、何とかなりましたし……異様な目で見られましたけど」

 はは、と苦笑をしつつ俺が告げると、ああ、と真夜さんは浮かない反応見せた。
 それが予想外のことだったので、あれ、と気になってしまう。

 まずかったのかな。

「……俺、何か下手な対応を?」

 正直に訊ねてみる。
 けれど真夜さんは答えない。
 ますます不思議に思ったんだけど、何となくそれ以上訊けそうな空気ではなかった。
 真夜さんのそんな様子を見て、未咲がこっそり俺を呼んだ。

「燿、ちょっと来て」
「え?」

 未咲に催促されて俺たちは一旦部屋を出た。
 何だろうと首を傾げる俺に、未咲は溜め息を吐く。

「ほんとのところ、うちの部署ってあまりいい印象持たれてなくてね」
「え? どういうこと?」

 未咲のそんな話に、俺は本当に素で訊き返す。
 何のことかさっぱりだったと言えばそれで済むんだけど、未咲の態度からいろいろ読み取ることは出来たとも言える。
 未咲は言いにくそうに、やや視線を下に向けて話す。

「うちの部署って“訳あり”揃いなんだよね。真夜さんは蝙蝠族、それに出来損ないのあたし。おまけに仮死状態の人間である燿まで加わって……ってことで、他の部署からはだいぶ胡散臭がられてて」
「……はぁー……」

 なるほど。

 例え今立派な死神だとしても、その手前には溝があるわけだ。
 俺はさっきの浮かない表情の真夜さんを思い出してちょっと罪悪感。

 真夜さん、すっげぇ気にしてるんだろうなぁ……。
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