死神にはなりません!


 オートロックなのか此処、とそのハイテク加減に若干驚きながら、俺は真夜まやさんの後に続く。
 どうやらこちらが居住空間らしい。
 とは言っても、着替えとか睡眠くらいにしか使用しないらしいとか。

 二手に分かれた階段の前で真夜さんが一旦止まる。
 向かって右の階段が女部屋、左が男部屋の棟に続いていると説明を受ける。
 うっかり間違えても、念のため結界が張られているから弾かれるんだそうだ。
 徹底してるなぁなどと、不純な妄想をしそうになる。

 今回真夜さんは上層部の認可を受けているので、俺と一緒に左の階段を上がっていく。
 もう一度扉があって、それも鎌で認証をして鍵を解除する。

「えーと、ひかるの部屋は」

 鍵に書かれた部屋番号を見ながら、ぽてぽて、廊下を進む真夜さん。
 此処はさすがに居住空間ということで、明るいし清潔感がある。
 死神も精神面の健康に気を遣っているようだった。

「ああ、あった。燿、此処よ」

 ぼーっと廊下の壁などの綺麗さを見ていた俺を、真夜さんが呼ぶ。
 俺はゆっくりと真夜さんの許へ向かって一緒に部屋番号を見る。
 二四一号室。
 ひとり部屋だから気楽に使って、と真夜さんが言いながら鍵を開ける。

 死神って何人いるんだろう。
 そんなことを気にしながら、開かれた扉の隙間から室内を覗く。
 途端、灯りが点いた。

「じゃああたしはこれで。起きたら呼んでね。迎えに来るから」

 俺に鍵を渡して真夜さんは早々に退室する。
 はいと返事をして、俺は真夜さんを見送ってから扉を閉めた。
 勝手に鍵も掛かるらしい。
 すげぇなぁなどと感心しながら、俺は部屋の中を点検した。

 ベッドとシャワー室とクローゼットくらいか。
 一応靴箱があるので靴は脱ぐらしい。

 っていうか俺、制服のままだったっけ。
 しかし気付いたときにはその制服は砂まみれだった。
 でも俺の血液みたいなものは付いていないようだ。
 それにはちょっと安心して、制服を脱ぐ。

 簡単に砂を払いたいなと思ってうろうろしていたら、幸運にも洗濯できる場所があった。
 洗濯機なのかどうかは分からないけれど、どうやら衣類を洗えるらしいので使ってみる。
 普段洗濯は俺の担当なので迷いはない。

 丸い、ドラム缶のようなそれの蓋を開くと勝手に水が溜められる。
 何から何まですげぇなぁと呟きながら、制服を入れて蓋を閉めた。
 ボタンを探している間に勝手に動き出す。
 びくっとしながら蓋のカバーから中を見ると、普通に洗濯機のようになっていた。

 安堵して、俺は隣のシャワー室へ。
 髪の毛も埃まみれである。

 簡単に身体を洗って、備え付けのパジャマみたいなものを着る。
 洗濯が終わるまで待ってた方がいいよなぁと思いながらも、ベッドに横になってしまった。
 勿論、眠りに落ちるまでそう掛からなかった。

 夢を見ていた。

 高校の制服を着て姿見の前で笑っている俺。
 そしてそんな俺を見て、嬉しそうにしている母さんがいた。
 似合うだのカッコいいだの、俺を褒めてくれる母さん。
 俺も嬉しくなって自慢していた。

 でも。

『……母さん?』

 景色が一変する。
 光に包まれていたその場がふっと暗くなった。

 椅子に座っていた母さんが、いつの間にか俺に背を向けている。
 どこかへ歩き出して行った。

『母さん? どこへ……』

 俺の呼びかけに母さんは答えない。
 ただ、ふっとこちらに向けられたその瞳が、泣きたくなるほど冷たくて。

 慌てて追い掛けようとするものの、距離は一向に縮まらない。
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