死神にはなりません!
燐さんの言葉にあったその言葉を俺は繰り返す。
燐さんは俺を冷ややかな瞳で捉えたまま続ける。
「うまくいけば人間界にも繋げることが出来る、ということだ。此処にも人間界にも馴染めるらしいのだからなお前は。お前の力を怨霊たちが操作して、行き来出来る範囲を広げられては困る」
現在、怨霊は霊界の周囲を浮遊している。
死を拒み、永遠の
そんな怨霊たちに、俺が万一引きずり込まれたら……だ。
どっちつかずの状態の俺は、裏を返せばどちらにも適応出来る可能性がある。
だから危険なんだ。
俺は、怨霊の活動域を広げられてしまうその道具にされるかも知れないんだ。
そんな燐さんの話に俺は悪寒を覚える。
怖いと呟く俺に、燐さんはもう一言投げる。
「お前ひとりのために、此処を乱されては堪ったものではない。お前は自分のことだけ考えていればいいだろうが、事実、この霊界が懸かっているんだ。覚えておけ」
そう俺を脅すように告げると燐さんは踵を返した。
燐さんの姿が見えなくなると、俺は喉から奇妙な声を出しつつ項垂れた。
一緒に黙って燐さんの話を聞いていた真夜さんも、はぁ、と疲れたように溜め息を零している。
「ほんと威圧的ね……呼吸もままならないわ」
「ですね……」
真夜さんの言葉に俺も賛同した。
けれど真夜さんは俺を見て意見する。
「でも、燐くんの言ってることは正しいわね。燿、あんたが今回、原因であり重要点になるとあたしも思うわ」
真夜さんにまでそんなことを言われてしまった。
俺は思わず苦笑してしまったが、本心は穏やかじゃない。
だって、まだ鎌だって使い始められてないのに。
戦う術がない状態で、俺にこんなプレッシャーを掛けてくるだなんて。
反則じゃね? この人達。
俺はしかし溜め息を零すと、そうですねと同意してみせる。
それからゆっくりと立ち上がると天を仰いだ。
「……やるしかない、みたいっすね」
実際、怨霊は俺を狙ってきた。
丸腰の俺は今回は守られっぱなしだった。
このままではかなり危険だ。
真夜さんたちに迷惑が掛かるだけじゃない。
俺が怨霊化して危害を加える存在になる可能性が、現実味を帯びているんだ。
それだけは……何とか回避しなければ。
「じゃ、未咲が戻ってくるまで、もう一回やりますか」
「……はい!」
真夜さんの言葉に鎌を拾って威勢よく返事をする。
けれど、軽く眩暈を起こすと俺はその場にしゃがみ込んでしまった。
燿、と真夜さんが俺を支えるように手を伸ばしてきた。
「す、んませ」
平気だと言って立ち上がろうとしたんだけど、どうにも視界の回転が止まらない。
それに足にも力が入らなくなっていた。
そんな俺を見て真夜さんは考えるように呟く。
「……そうね、燿、休んだ方がいいかも。思ったより精神のエネルギーが消耗されてるんじゃないかな」
「え……?」
回る視界の中で、俺は真夜さんの顔を捉える。
真夜さんのそんな言葉が、その時は理解出来なかった。
でも、単純に「疲れている」ってことは自分でも把握していた。
だから俺は無理はやめようと思えたんだ。
こんな状態では集中出来るものも出来ないだろうし。
俺は真夜さんの手を借りて何とか立ち上がった。
「部屋も、多分用意されてると思うんだけど」