死神にはなりません!
「わぁぁっ!」
一緒に俺も宙へ浮かぶ。
真夜さんは俺を左手で連れたまま、怨霊の群れへと突っ込んでいく。
どうやら俺を狙っているらしい怨霊たちが、俺と真夜さんに群がってくる。
真夜さんはそんな怨霊たちを一網打尽に仕留めて行く。
真夜さんが鎌を一振るいすると、最低でも三体は怨霊が斬られていく。
ばらばらと落ちて行く怨霊の四肢を目で追い掛けてゆく俺は、問答無用で真夜さんに引っ張られる。
真夜さんは器用に俺の体重をも使いながら、宙を移動し怨霊たちを退治していく。
確かに彼女はエリートと呼ぶに値する。
そんなときだった。
『ヒャァっっ!!』
真夜さんの鎌をかわして、一体の怨霊が俺を狙って飛んできた。
俺は慌てて避けようとして、真夜さんとは逆の方向へ重心を掛けてしまう。
ひか、と真夜さんの呼ぶ声が、遠くなっていく。
俺は地面に向かって落下していた。
まじか、と落ちて行く光景をスローで見ながら、俺は空に向かって手を伸ばす。
やばい、これはやばい。
まだ死ねないのに――!
「っ……はっ!?」
なんて、背中から思い切り地面にぶつかるはずだった俺は、何かに支えられる感覚を覚える。
しかしすぐにその手は俺から離れる。
俺は結局、尻餅程度で済んだ。
「いって……」
「全く、私の上に落ちてくるとは無礼な」
そんな声で、俺は助けてくれた相手を知る。
俺を蔑むように見下ろしてくる燐さんが隣に立っていた。
その事実に茫然となりつつ、あ、と反応を見せる俺から、燐さんは視線を外す。
「性凝りも無い雑魚めが」
そう燐さんは小声で呟くと地を蹴って攻撃に出る。
俺の隣からいなくなったと思った、その一瞬。
燐さんの構えた鎌に宿った膨大なエネルギー。
燐さんはそれを軽く纏うかのように扱う。
真夜さんは巻き添えにならないよう計算された軌道。
怨霊の束を目掛けて、燐さんは一度だけ鎌を振るった。
途端、怨霊全体に起こる竜巻。
怨霊を呑み込み、次々にその四肢を切り刻む。
燐さんは最後に怨霊に向かって炎を放った。
怨霊たちの断末魔と共に炎も一緒に消えて行く。
ふっと緊張感が切れたように、その場の空気が切り替わった。
「っ、はぁ!」
俺は思わず大きく息を吐き出す。
呼吸がままならない状態になっていたようだった。
「燿、無事っ?」
そんな俺の許に真夜さんが降りてくる。
鎌を筒に戻し、真夜さんは俺の真ん前にしゃがみ込んだ。
俺は胸の辺りをしっかりと掴んで心臓を落ち着かせながら、真夜さんに頷いた。
「案の定、嗅ぎ付かれたか」
そんな俺たちの方へ燐さんもやって来た。
案の定、の一言に、俺は怪訝そうに眉をひそめた。
「どういうこと?」
俺の代わりに真夜さんが燐さんに訊ねる。
燐さんは筒に戻した鎌をしまいながら淡々と告げる。
「生身でもない死人でもないどっちつかずのそいつは、怨霊にとっては願ってもみない存在だ。利用価値が有り過ぎるからな」
「利用……価値?」