死神にはなりません!


「……はい」

 待てども待てども、一向に何も聞こえて来ない。
 頭に浮かびもしない。
 しん、とした空気の音が耳を突いてくるだけ。
 つうか単純に此処寒い、とか余計な雑念が入っているのがまずいのだろうか。

「うーん、大体一回で分かるんだけどねぇ」

 真夜さんが腕組みをして考えている。
 ごめんなさいと思わず謝ってしまう。
 やっぱり契約したときから俺にはいろいろハンデがあったわけか。

 ふうと溜め息を吐いて、一旦腕を下ろす。
 俺は何気なく真夜さんに質問してみた。

「真夜さんも一発でした? 鎌の開封」

 真夜さんも生粋の死神ではないから、何かの参考になるかと期待した。
 しかし、真夜さんはあっさりと首を前に傾ける。

「まぁねぇ、あたしはちゃんと死んでたし、死神になるぞーって意識強かったから。鎌もそれに応えてくれたと思うんだよね」
「……ああ、そうか」

 確かに前提が違い過ぎる。
 俺は悪く言えば不純なんだ。
 生き返りたいから死神になるという、ちぐはぐな動機。
 だから誇り高き死神の相棒、鎌にとっては、俺はそうそう簡単に認めたくない存在って言われれば、納得も行く。

 でも。

「ここで躓くとあと大変にしかなりませんよね」
「そうねー」

 はぁ、と盛大な溜め息を吐き、俺と真夜さんは考え込んだ。
 しかし鎌が拒絶しているものを、俺が力でこじ開けるわけにはいかない。
 まぁそんなこと出来るとも思えないけど。

「とにかく、鎌を説得することからかねぇ。どうやっていいかは分からないけど」
「……そんな適当な」

 真夜さんの適当アドバイスに俺は泣きそうである。
 完全にひとりで頑張らなきゃいけないパターンじゃないか。
 どうしようと慌てる気持ちと、逃げ出したくなる気持ちが湧き上がる。
 でも自分でやるって言ったことだしなぁ。

 取り敢えず考えていても前に進めないので、何回でも挑戦してみることになった。
 同じポーズを何度も取って、鎌に意識と力を集中させる。
 何回も念じて何回も力を送って。
 それでも鎌からの応答はない。

 嫌になってきた。

「なーんーだーよー」

 全く、と無意識に舌打ちをしていたらしい俺。
 それを真夜さんに指摘された。

「こら燿! そういう態度は駄目。仮にも契約したんだから」

 真夜さんにそう諌められて、俺は初めて自分の態度に気付いた。
 スンマセンと慌てて真夜さんに謝ると、真夜さんは溜め息混じりに返す。

「謝るのはあたしにじゃなくて?」

 そこで区切られる。
 俺は自分の右手にある鎌に目をやった。

 済まん。

 口に出すのは何となく気が引けたので心の中で謝った。
 仮にも契約を交わした相手。
 それを繋ぐものは信頼関係のみ。
 俺はこいつと本当に、意思疎通が出来るのだろうか。
 深刻に考える俺に、真夜さんの声が降ってくる。

「……とにかく、信じるってことには根拠も理由も要らないものよ。ただ、相手に自分を預ける覚悟は要るかも知れないけど」
「預ける?」

 真夜さんのそんな言葉に、俺は伏せていた顔を上げる。
 真夜さんは俺を見て頷いて、軽く続けた。
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