死神にはなりません!


「はー、なるほど」

 まるで他人事のように納得する俺。
 呑気ねー、ととうとう真夜さんにツッコまれた。
 続けてこんなことも。

「燿の場合はほんと未知数過ぎるのよ。死んでないのに此処霊界に存在してるし、そのくせ鎌が拒絶反応見せるとか」

 どっちなのよと真夜さんには言われるけど、俺にだって分かりません。
 ただ俺は一刻も早く戻りたいってだけ。
 だから人間に戻れるであろう一番の近道を選択し続けるだけだ。
 多分その選択が正しいと思うから。

「何はともあれ、一回やってみるかね」

 こんなところでうだうだしてないで、と真夜さんが再び外へ向かおうと言い出した。
 俺はいいんだけどと思いながら、ちょっと気になったので質問をしてみる。

「えっと、真夜さんも未咲も、自分の仕事はいいんですか? ある、でしょ?」

 俺のことに付きっ切りって有り難いんだけど。
 でもふたりとも仕事あると思うんだ。
 今まで此処でそうしてやってきてるんだし。
 と俺のそんな配慮に、未咲がおずおずと切り出す。

「……まぁ、あるけど……あたし燿のこと気になる」
「えー、未咲仕事残ってるの?」

 白状した未咲に、真夜さんはまずそっちを片付けて来いと指示した。
 未咲は何か言い返したかったようなんだけど、真夜さんの指示には従うらしい。
 ちらちらと俺のことを気にしながら一旦その場を外した。

「行ってらっしゃい」

 そんな未咲を、俺は励ましを込めて送り出した。
 未咲の姿が見えなくなると、さて、と真夜さんが切り出す。

「じゃ、やるかー。これは骨が折れそうだけど」
「……そうですか?」

 真夜さん、本音が漏れてるよ。
 わざとなのか天然なのか、俺には確認する勇気はなかった。

 真夜さんに付いて再び外へ出る。
 そして、真夜さんによるレクチャー開始。

「まず、鎌の封印を解かなきゃいけないのよ。鎌の意思を眠りから起こすって感じかな」
「え、振ればいいわけじゃないんですか?」
「そうよー。まず最初の最初は、儀式みたいなもんがあるのよ」

 そう言いながら、真夜さんは自分の鎌を取り出してお手本を見せてくれた。
 鎌を両手に持ち、親指と小指に掛けるように収める。
 そして両手を前に押し出して力を鎌に向かわせる。
 そのとき力がある程度溜まったなと思ったら、何か呪文みたいなもんを口にするらしい。

「その言葉は?」
「自由よ」

 え?

 予想外の真夜さんの答えに俺は拍子抜け。
 しかし本当の意味はこう。

「本当に意思疎通が出来たかどうかが開封の呪文に出て来るの。鎌がね、言葉を教えてくるのよ。この言葉で起こせって」

 ……そんなからくりになっているとは。
 案外厄介だぞ、こいつ。
 俺は自分の鎌を見下ろしてちょっと身構えた。
 急に扱える自信がなくなってくる。
 どきどきと嫌な汗を掻きながら、俺も真夜さんのお手本に倣う。

 鎌を両手に収めて、意識を掌に集中。
 真夜さんの説明通りなら俺にも聞こえてくるはず。
 鎌からの信頼の言葉が。

 しかし。

「……」
「……なし?」
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