死神にはなりません!


「未咲の言い方、可愛いなぁって思って」
「……!」

 深い意味はない。
 どちらかと言えば、猫とかそういう意味の可愛いに近かった。
 でも未咲は真に受けたのか、急に黙り込んで顔を赤くした。
 俺がきょとんとしていると、その様子を見ていたらしい真夜さんの声がする。

「タラシね燿」
「たっ!?」

 予想外の言葉に俺も吃驚する。
 何が、と勢いそのまま真夜さんにツッコミを入れるものの、真夜さんは真剣な顔付きで何やら呟いている。

「燐くんに思わぬ強敵か……見応えがありそうね」
「だから何がっすかぁ!?」

 真夜さんがひとりで話を進めているので、俺は必死に食らい付いてみたんだけど教えてくれなかった。

 結局その話はそこでお終い。
 さて、と真夜さんが話を切り替える。

「で、もらえた? 鎌」

 真夜さんがあっさりと話題を変えるので、俺はさっきまでの勢いで喋りそうになる。
 しかしテンポが狂って変な返答に。

「そりゃもらえましたってば! 何かすっげぇつらかったけど!」
「つらい?」

 俺のヘンテコなテンションでの発言に、真夜さんと未咲がきょとんとしている。
 つらい? ともう一度訊かれて、ようやく俺も我に返る。

「え、ええ、はい?」

 俺何か可笑しなこと言ったかなと不思議に思えてきょとんとする。
 そんな俺に、未咲が素直に訊ねてくる。

「やっぱり何か意地悪されたんじゃ」

 不安そうな未咲のそんな言葉に俺は説明する。
 何かされたっていうか、その鎌との契約ってやつが予想外に身体に負荷が掛かったって言うか。
 と、その時感じたことを正直に伝えてみた。

 すると真夜さんが「へぇー」と感心している。

「初めて聞いたわそんな感触。未咲なかったでしょ?」
「はい、全然」

 え? 何で?

 そんな真夜さんの発言に俺は軽く衝撃。
 何、あんな試練受けたの俺だけ!? とかひとりショックを受けていると、うーんと真夜さんが推測する。

「やっぱり、燿はまだ死んでないってことか。鎌がちょっと拒絶反応見せたのかも」

 そう言われると何故か素直に腑に落ちた。
 そうか、やっぱり俺そうなんだ。

 さっき〝鏡の間〟で見た病室のベッドに横たわる自分を思い出す。
 懸命に生きようともがいている自分の肉体。
 そして、俺の回復を願う父さん。

 ぎゅ、と鎌を掴む右手に力を込めた。

「でも、それって大丈夫なのかな」
「よねぇ。気になってるのよ」

 そんな俺をさておき、未咲の不安そうな一言に真夜さんも同意している。
 何がすかと呑気に訊ねる俺。
 まだ問題に気付いていない俺に説明してくれたのは未咲だった。

「だから、鎌が拒絶するってことは思ったように扱えないかも知れないってこと!」

 そう説明されても俺はその時まだ、それが何か、程度にしか思ってなくて。

 要するにこういうことだ。

 死神の鎌にも意思というものがある。
 契約する理由もそれで、死神と鎌との間に信頼関係然り、意思疎通が必要なんだと。
 扱うこちらがよくても鎌が嫌がるっていう例もあるらしくて、ちゃんとした死神ですら起こり得ることがまだ死んでない俺に起こらない、ってことは……言い切れない。
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