死神にはなりません!
「真夜さんはねぇ、蝙蝠から死神に成ったエリートなんだよ」
「いやぁ、それほどでも」
……成れるの?
一から十まで話が分からず、俺だけ完全に置いてけぼり。
未咲と真夜さんは楽しそうにその時の話をしているし。
何なの、コウモリから死神への進化って!
「死神、って人間じゃなくてもなれるの?」
ふと零した俺の問い掛けに、は、と未咲が反応した。
しかもとても怪訝そうな顔で。
「何言ってるの燿。死神は人間から成るものじゃないよ」
「えっ!?」
連続して驚かされる。
俺の認識が、というか人間が作った設定そのものが、どうやら間違いらしい。
正式な死神という存在は、最初から死神だという。
別段自殺した人間が強制させられる仕事でもなく、ホラーなんかで描かれるような怖いものでもない。
死神は、今世を全うした魂をきちんと次へ繋げるという任務を任された、誇りある存在なんだそうだ。
未咲のそんな説明を受け、ほぁー、とへんてこな声が出る。
ただ驚いて、そして感銘を受けた。
死神って怖いなぁって実は思ってたので……心の中で謝っておく。
「でもまぁ、特別枠みたいなもんはあるのよね。死神志願すれば一応面倒は見てくれるし」
未咲が一旦話を区切ったところで、真夜さんがそう口を開く。
真夜さんは自身の過去は話さずに、死神志願をしたところから教えてくれた。
コウモリという異種族からの挑戦。
魂の力を試験され、それから適性を見て真夜さんは死神に相応しいという許可を得たんだそうだ。
「すげー」
ぱちぱちと俺は真夜さんに拍手を送る。
真夜さんはちょっと照れながら、それでも嬉しそうに呟く。
「そのまま次へ転生っていう道もよかったけど……死神に成れてほんとに有り難かったな。自分の居場所が見付かったみたいで」
「真夜さん……」
彼女にどんな過去があったのかは分からない。
でも今の真夜さんを見ている限りでは、今がベストなんだろうって思える。
「で、えーと、さっきので何が分かったんですか?」
ほんわかしていた俺と真夜さんに未咲からの質問が飛んでくる。
ああ、と我に返り、俺もそうそうと真夜さんを見た。
真夜さんは腕組みをしながら頷いて話し出す。
「燿の適性よ。度胸と観察力と俊敏さ。取り敢えずは合格点ね」
え、あれだけで分かったの?
当然のように真夜さんが話すので、ツッコミを入れるタイミングすら逃した。
未咲も未咲で、ほうほうと頷いているし……。
本当に分かったのか。
「あの、出来ればひとつずつ教えてくれませんか?」
自分の適性を知っておきたいという理由もあって、俺は真夜さんに説明を求めた。
真夜さんは淡々と教えてくれる。
「まず俊敏さ。それはあの子を避けられたからまぁまぁある。次に観察力。得体の知れない存在の正体を暴こうとしてたから、ある。そんで度胸は……まぁこれからかな」
「これからですか」
真夜さんの説明の最後には、俺はちょっと脱力した。
度胸ないかなぁ……。
うーん、と考えていた俺に、未咲が何やら嬉しそうに寄ってくる。
「凄いじゃない燿! 死神の適性高いよ!」
「……うー……そうなのかなぁ」
何だろう、素直に喜べない。
つーか人間に戻るための一時的な死神仕事なわけなんだし……死神の適性高いよなんて言われてもどうすりゃいいの。
なんてわいわいしていた俺たちの許へ、あの人の声が届いた。