死神にはなりません!
相当堪えたのかも知れないなぁなんてやっぱり不憫に思いつつ、俺も未咲と一緒に部署に戻った。
俺たちが部屋に着くと、ほぼ同じタイミングで真夜さんも帰ってきた。
しかし未咲が不機嫌なままだったので、取り敢えずまず俺が疑われる。
俺は未咲の耳には入らないような小声で真夜さんに事情の説明をした。
「……なる」と、真夜さんも把握済みの事実だったようで納得してくれた。
本当にみんな知っていることなんだな。
それが分かると、何となく未咲が嫌がる気持ちも分かるような気がした。
「ま、時間が経てば頭も冷えるでしょうし。早速訓練始めましょうかー」
ぽんと手を叩いて、真夜さんが俺と未咲に言った。
わ、いよいよか、と俺は急にどきどきする。
例えが悪いんだけど、体育祭でリレーやるみたいな緊張感。
その程度だったんだよ、まだその時は。
真夜さんに指示されて、俺と未咲は部屋を出る。
そして出て来たのは建物の外だった。
此処は裏手になるようで、運動場みたいな広いスペースがあるだけで他には何も物がなかった。
此処で……何するんですか?
きょとんとしている俺に真夜さんは説明する。
「では、まず燿の身体能力を調べます」
え、と思ってから、一瞬のことだった。
真夜さんの手から何かが俺に向かって、一直線に突っ込んできたのは。
「ぅわっ!」
慌ててその黒い物体を避ける。
文字通り風を切る速さと鋭さ。
その物体が飛んでいった先を見送りながら、何、と思っていた俺にそいつは再び向かって来る。
灰色の空で方向転換をして、そいつは加速しながら俺を狙いに来た。
勿論一緒に走って逃げられる速さではない。
必然的に、俺はそいつをかわすしか手段がなくなる。
風切り音の中、その黒い物体の正体を見ようと目で追い掛けた。
こんなに速いのに飛んでいるそのものの音が聞こえない。
推理する俺の顔面で、そいつが急に止まった。
「蝙蝠……?」
コウモリ。
実物を見たことはないけど、図鑑で得た知識からすればそいつはコウモリだった。
通りで羽音が静かなわけだ。
なんて感心していた俺にそのコウモリが挨拶代わりに一発。
「いでっ!」
体当たりとも呼べそうな攻撃を俺の額にしてきた。
「んー、まぁ大体分かったわ」
真夜さんの声と共にコウモリは方向を変える。
犬が飼い主の許に戻るかのように、コウモリは真夜さんの許へ飛んでいった。
「真夜さんの……ペット? ですか?」
一体今ので何が分かったのかは定かではないが、俺も一応真夜さんと未咲の許へ。
すると真夜さんは俺の質問に頷いて答える。
「というより家族っていうか、仲間かなぁ」
「仲間?」
それほど大事にしているのかと初めは感じた。
確かに、人間でもペットと呼ばず家族という認識の人は多いし。
なんて思っていたのは見当違いだったようで。
感心していた俺に、事実を教えてくれたのは未咲だ。
「そうだね、真夜さん蝙蝠だったもんね」
……?
コウモリ、だった?
え、何言ってるの未咲?
「蝙蝠だったって、何が? 未咲、何を」
きょとんと混乱する俺に、未咲は頷いて真夜さんの正体を明かす。