死神にはなりません!
でも俺は首を横に振って話を続けた。
「すっげぇ落ち込んだし自分を責めたし、本当に生きてるの嫌になったよ。でも、父さんはそんな俺を今まで以上に大事にしてくれたから……」
だから、父さんのためと母さんへの罪滅ぼしのつもりで、生きてた。
だから。
「俺は死ねないよな。父さんのこと、独りにはさせられない」
そう微笑みながら未咲を見る。
と、未咲が号泣していた。
びくっとする俺に未咲がつかつかと歩み寄って。
そして、がばりと俺に抱き着く。
「うん、そうだよねぇ!! 燿は生きなきゃ駄目だよ! あたしも頑張るからっ!!」
泣きながら、俺をぎゅうううと抱き締めて叫ぶ未咲。
俺はどうしていいのか分からず、「お、おう」としか言えなかった。
結局未咲を泣かせてるし、というか死神とはいえ女の子ってすげぇいい匂いする……。
なんてちょっと照れていた俺の視界に、運悪く入ってきた人物がいた。
「……な、に、をっ……してるんだ貴様ァァァ!!?」
静かに扉が開かれたと思ったら、何とまぁ入ってきたのは例の男性、燐さん。
げ、と思いっ切り叫んで、慌てて燐さんへの言い訳を考え出す。
しかし燐さんはもはや激昂状態で、かつかつかつと力強く俺たちの方へ歩いてくると、俺からべりっと未咲を引き離した。
わっと驚く未咲は、そこでようやく燐さんに気付く。
「り、何で此処にっ」
俺に全身全霊で殺気を浴びせている燐さんに、未咲が怪訝そうな目付きで訊ねている。
燐さんはそんな未咲にはふっと柔らかな瞳にして優しく声を掛ける。
「この〝鏡の間〟へ未咲が向かったと聞いたものなのでな、何の用かと訪ねに来たまでよ。それにしても、危ないところだったな」
本当にほっとしたように燐さんは未咲に話す。
しかし未咲は険しい目付きのまま呟き返す。
「は? 何が危ないの?」
そんな未咲に、燐さんは再び鬼の形相で俺に殺気を浴びせる。
「未咲、この男に襲われそうになっていただろう? 全くけしからん!」
燐さんの都合のいい解釈に、未咲は勿論だけど俺もぽかーんとしてしまった。
……燐さんにはそう見えていたんですか。
違いますよーと俺から言っても無駄だろうなぁと薄々感じながらも、俺は燐さんに事実を告げようとする。
しかしその仕事は、俺以上に燐さんに呆れている未咲がしてくれた。
「バッカじゃないの。あたしから燿に抱き着いたんだけど?」
「ば……なっにィィィっ!!?」
最愛の未咲に馬鹿呼ばわりされたこともショックだったらしい燐さん。
しかしそれよりも、やっぱり後半の方が衝撃的だったようで。
燐さんは未咲の身体を自分の方へしっかり向けながら未咲に詰め寄った。
「ば、馬鹿を言え未咲……何故、そのような……なななな何を言って……」
「そんなに動揺しないでよ、鬱陶しい」
完全に混乱状態の燐さん。
未咲は自分の肩を掴んでいる燐さんの手をぱっぱと払った。
硬直状態の燐さんは暫くそのまま止まっていた。
でも途端、弾かれたように俺を見て、いや、睨んできた。
「き、貴様……未咲に何をしたんだ……!? 何か特殊な術でも使ったのか!?」
「……いや、俺ただの人間なんで……」
「ならば何故だ! 未咲が何故貴様なんぞに抱擁をするのだ!!」
怒りたいんだけど、哀しみも一緒に溢れ出しちゃっているらしい燐さん。
感情がめちゃくちゃになっている。
見ていて何となく不憫……。
しかしうまく対処しようとしている俺をよそに、未咲が淡々と燐さんに言い放つ。