死神にはなりません!
「鎌は使う本人だけが触っていいものなの。鎌と契約しているから、他の死神が触るとその途端に死んじゃうって言われてるの」
「……怖ァ」
もう、と怒る未咲。
しかしそれって、要するに俺のこと守ってくれたってことで。
それに気付くと俺は素直に未咲の話を聞き入れた。
「そっか、ありがと」
「え。あ、うん」
俺が礼を述べると、未咲は自分の気遣いに気付いていないのかきょとんと返事をした。
それとも気遣いじゃないのか。
それは分からないけれどと思いながら、俺は未咲に続ける。
「でも俺、鎌使えるの? 死神じゃないけど?」
「……うーん、そうだよねぇ」
鎌は死神の代名詞。
まだかろうじて人間である俺も使ってもいいものなのだろうか。
ふたりして考えても埒は明かず。
「……取り敢えず、鎌の件は置いておこう。その内連絡も入るよ」
未咲はそう、あっさりと結論付けてしまった。
いいのかそれで? とも思うけど、俺から鎌が欲しいとも言えず。
やるって言ったことだけど、出来ればサクッと終わらせたいしなぁ。
まだ呑気に構えている俺に未咲は言う。
「以上だけど、何か質問はある?」
これで以上なのか。
何だかあんまり細かい説明じゃなかったけど……まぁ、一気に言われるよりは、追々の方がいいか。
なんて俺も未咲のペースで考えていた。
質問かぁ。
腕組みをして首を傾げる。
特別……今知っておいた方がいいことはなさそうだが……。
つうか何を把握して、何を知らなくていいのかも判らないんだけど。
なんて一通り考えていて不意に気付く。
これはもしかしたらタブーかも知れないなと思いながら、未咲に向かって挙手した。
何、と首を傾げる未咲に、俺は控え目に訊ねた。
「……あの、実際の俺っていうか、その、人間界にいる俺って今どうなってるのか……分かります?」
俺の質問に未咲は「あー」と呼応した。
今までうっかり忘れていたけれど、そっちの俺は死んでないって閻魔大王が言ってくれたし……俺どうなってるんだろう。
思い出すと、ちょっと胸が痛む。
母さんのこともそうだけど、もっと気になるのは父さんのこと。
やや俯いて表情に影を落とした俺に、未咲は呟く。
「うーん……それはあたしも知らないから……見た方が早いかも」
「は? 見る?」
頬に指を当てて考えながら話す未咲。
俺はそんな未咲の発言にきょとんと返した。
見るってどういうこと? 何を見るの?
ちんぷんかんぷんな俺を、未咲が手招いた。
「多分行けるよ。付いて来て」
そう告げると未咲は部屋を出て行く。
俺はやや警戒しつつ、そんな未咲の後を追う。
廊下を進み階段を下りていく。
今までいたあの部署が何階にあったのかは定かではないけど多分、地下くらいまで下りて来ただろう。
より薄暗く空気は冷たく、言い方は変だけど威圧感があった。
文字通り空気に圧力でも掛かってるんだろうかと思えるような緊張感だった。
そんな場所を暫く歩いて行くと、ひとつの扉が見えてくる。
どっしりとした銀色の観音開きの扉だ。
「此処は?」
俺が訊ねると、前を歩いていた未咲が俺を振り向いて答える。
「この部屋は〝鏡の間〟というの。他の世界の様子を映してくれる鏡で出来ている部屋なんだよ」
他の世界の様子。
未咲はそう説明をすると俺から視線を扉に戻す。
そしてあの筒――死神一人ひとりと契約をしているという鎌を扉に当てた。