第4話


 話に一区切り付いたようなタイミングで、華倉が1枚に収まったタイプのカレンダーを取り出して本題に移った。

「簡単にですが、やはり祝詞は挙げておこうと思います。稲荷様と地域の方々へのご挨拶を兼ねたものになりますが」

 その日取りや準備するものの話を始めると、所謂祭壇などの備品を何処にしまってあるかなどの話も自然に出て来た。
 杉野がタブレットで地図を出し、倉庫はここです、と指でマーキングする。
 華倉がその地図の共有を申し出ながら自分のスマホを取り出す様子を、若いねぇー、と野崎が呑気そうに茶化した。

 町内に知らせるポスターなどは葉山が作ると言ってくれた。
 自治会にも顔が利くらしい、葉山は回覧板に入れてもらおうと楽しそうに喋っていた。
 ポスターなどお知らせは日程が決まり次第作ってもらうよう華倉は葉山にお願いし、その場の全員に神事の準備や手伝える人がいるなら声を掛けてくれるよう頼んだ。

 計画をまとめているうちに話は他の話題も混ざるようになっていた。
 完全に雑談と化し、ついでに昼も食ってくかーと野崎がマスターを呼ぶのと重なるように、葉山が華倉に声を掛けた。

「そうだ篠宮さん。近くに静岩寺ってお寺があるのはご存知?」

 その名前が出たとき、華倉は一瞬だけ警戒し、メモを取っていた手を止めてしまった。
 しかし小さく呼吸をして平静を保つと、ええまぁ、と返事をしながら答える。

 幸い華倉の変化に気付いた人間はおらず、葉山はにこにこと楽しそうなテンションのまま続けた。

「私、そこの檀家なのだけど、再来週の土日に寺マルシェっていうイベントがあってね、お手伝いに行くの。篠宮さん、良かったら遊びに来てね」

 そう言いながら何か思い出したようにカバンを開け、葉山は1枚のチラシを華倉に差し出した。
 静岩寺の住職から手渡された、あのチラシと同じものだった。

 このチラシも私が作ったのよと葉山は笑う。
 パソコン作業もさながら、デザインのスキルもあるのだろう。
 凄いですね、と華倉は改めてチラシを眺めて感心したように呟いていた。

「葉山さんは檀家じゃなくてもこういう仕事引き受けていそうですけどね」

 ふふ、と控えめに笑って杉野がそう口を挟んだ。
 葉山は特に気を悪くすることもなく、逆に「そうねぇ」と頷いたりしていた。

 皆日替わりランチだけどいいかー、と野崎の声に杉野がまず反応する。
 華倉も遅れて頷き、礼を述べるとチラシに視線を戻した。


***


「再来週ですか」
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