第2話
本堂の裏手に隠れるように建てられている石碑――それは石塚のようでもあった。
切り出したのか崩れたものか、微妙に人の手が加えられた、しかしあるがままの姿で置かれた岩の塊。
何か文字が書かれているわけでもなく、ただそこにどっしりと、静かに佇んでいた。
「……どう魅耶? 稲荷神の言う鬼なんかの気配とかする?」
残念ながら此処に来た今の華倉には、鬼の陰気みたいなものは何も感じられなかった。
恐らく背負っている「鍾海」の力が強過ぎて、鬼の陰気を消してしまっていたのだろう。
昨日は動けなくなるほどの恐怖に襲われたというのに、華倉はその場で自分が何も分からないことに気付かずに魅耶の反応を待った。
魅耶はじいと石碑を見詰め、暫く黙っていた。
それから小さく、呼気とも呼べそうなほど小さな声で1つ何かを頷く。
「多分、そうですね……ここには鬼の、亡骸があると思います」
「亡骸?」
華倉の応答に、魅耶は目線を変えずに石碑を見詰めたまま続ける。
「亡骸とは言っても既に骨だけでしょう。然るべき手段で供養も、力の抑え込みもしてあるようですが……」
魅耶の顔付きが険しくなるように、怪訝そうに眉を顰める。
――数が異常ですね。
魅耶の口から出たのは軽い声色の、重たい推測だった。
2024.11.19