帰結


 最後に暢洋さんはまた背凭れに上体を預けてリラックスした姿勢に戻りながら訊ねる。

「国内にいない方が嬉しい?」
「……」

 出来る限り可能性は潰しておく、そういうことだろうか。

 今後俺がどうやって生きていくかについてはまだ決まったことはない。
 けれど俺はまだ日本で過ごすことにはなるだろうから、物理的距離が確保出来るならそれに越したことはない、よな。

 突拍子もない質問だったことは確かで、だからうっかり反応が遅れたんだけど、俺はそのまま首を縦に振って「その方がいいです」と返した。
 それを聞いた暢洋さんは何故か楽しそうににっこりと笑った。

 じゃあ決まりだと言うと、タイミングを待っていたかのように横から舜さんがパソコンやら何やらを暢洋さんに渡す。
 暢洋さんはパソコンを左手に抱えたまま操作して、んじゃこんな感じかな、と舜さんに話し掛ける。

 俺の方からは何も見えないし、会話する声も小さいのでうまく聞き取れない。
 はい、はいと丁寧に頷く舜さんの真剣な瞳を見て、俺は自分で用意してそれきりだったお茶を飲むことにした。

 今後のことは何も決めてない、けど許されるのならまだ暫くは此処に置いてほしい。
 舜さんのところに。

「じゃあここのついでに片付けてくるね。終わったら舜くん宛に連絡入れるから」
「分かりました」

 暢洋さんは話を纏めたらしい、舜さんにそう告げてよろしくと真面目に聞いていたその頬にキスをする。
 突然のキスに舜さんは狼狽えることなく返事をしていたけど……耳が赤かった。

 本当に好きなんだなぁ、ともう嫉妬すればいいのか安堵してもいいのか分からなくなる。

「取り敢えず陸くんには、僕の出張ついでに君の母親を現地に捨ててくることにしたことだけ伝えておくね。その際家財道具も全部処分するために持ち出すから、残しておきたいものがあれば探しといてね」

 あまりに自然に言うものだから、一度普通に返事をしてから気付いて「おあっ?!」という声が出た。
 捨ててくるって言ったぞこの人。
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