帰結
資料の枚数はA4用紙が3枚。
俺の人生の全てが、3枚に収まっている。
期待をしていたのだろうかとそれを見て何となくそう感じて、でも何の期待なのかはよく分からず、俺は向かいに座る暢洋さんを見返す。
決められるかどうか。
勿論、あの人の処遇のことだ。
俺の望むように暢洋さんはあの人――俺の母親を“始末”してくれる。
物騒だなぁと俺が思ってるのを見てか、どんな手段でどんな内容で始末してくれるのかは考えなくていいって数日前に舜さんが言ってくれた。
それを聞いても尚、本当にそうしたいのか分からないまま。
正直、もう2度と俺と関わることがなければあんな人どうしていようが気にならない。
とにかくもう会いたくない。
それだけなんだ。
だから俺から頼めることってなると……消極的というか後ろ向きというか、そんな表現になる。
「……もう2度と、俺と会わないようになれば……別にどうなっててもいいです」
俺は正直にそう伝えた。
どちらかと言うともうあの人について何か考える興味もなかった。
死んでほしいとか酷い目に遭ってほしいとかそんなことすらどうでもよかった。
本当に会いたくない。
あの人が俺のこの先の人生に出て来なければ、現状俺はそれだけで救われる。
俺の決断を聞いて、ふむ、と呼応しながら暢洋さんは一旦座り直す。
背凭れに預けていた上体を起こし、俺の話を聞く姿勢を取った。
「確実に会うことさえなければ生きててもいいってこと?」
暢洋さんは何か確認を取るみたいに問い掛けてくる。
頷く俺に暢洋さんはあと2つ3つ質問を続けた。
全てに曖昧な消極的な返答をした俺に、変わらず暢洋さんは柔らかな笑みを見せてくれている。
こんな模糊とした望みでもいいのかと拍子抜けすると同時に、具体例がなくても手段があるんだなぁという空恐ろしさがうっすら感じ取れた。