特別な友達
「逢坂さ~ん、最近鳳凰さんから手紙がさっぱり来なくなっちゃったんだけど何か知らない?」
打ち合わせが続くその日、数ヶ月振りに顔を合わせた浅岡から魅耶はそう訊ねられた。
鳳凰、と小さく呟いて、魅耶は繰り返すように訊き返す。
「手紙、って文通のやつですか?」
「うんそう。段々間隔は空いて来てたな〜って思ってたんだけど、いつからかぱたりと来なくなっちゃって」
何かあったのかなぁ、と浅岡はいつになく気掛かりそうに目を伏せる。
そんな心配そうな浅岡の顔を眺めながら魅耶はここ数ヶ月間のあれこれを思い出し、あー、と声を漏らす。
浅岡からは魅耶の反応に情報がもらえるだろう期待の眼差しを向けられたが、魅耶はすぐには口を開かずにいた。
そうか、この人は鳳凰の“正体”を知らないのだった。
鳳凰と浅岡を会わせたときは鬼神のことも聖獣のことも表立った問題はなく、至って平穏な状況だった。
そもそも事実を伝える必要もないだろう、とのことで、浅岡には鳳凰に対しての素性は全く以て適当なものを伝えていた。
浅岡にとっては鳳凰は自分と同じ人間で、同じ世界観の中で生きている存在だ。
けれど実際の鳳凰という存在は三聖獣のうちの1体で、四神青龍の代役を務めている。
それと並行するかたちで、禁忌を犯そうと試みる聖獣白沢の謀略を未然に防ぐために尽力していた。
現在そこでの疲労と著しい力の消耗により、療養に専念しているのだ。
さてどこから話すか、先程から期待と不安の色を混ぜた眼差しでじぃとこちらを凝視し続ける浅岡を、チラリと見やって魅耶は考える。
取り敢えず固有名詞は伏せたうえで、状況の事実だけ述べることにした。
「……彼はちょっと前まで大きな仕事に取り組んでましてね。時間も体力もあるだけ注ぎ込まないといけないような」
「え、っえぇ……??」
そんなとんでもない仕事って一体どんな、と驚嘆の顔になる浅岡に頷きながら魅耶は続けた。
「何とか仕事は完遂したのですが文字通り命を削るような内容でしたので、今は1日の半分は寝ているような状態ですね」
魅耶は特に知らなくても構わないのだが、華倉が不安そうにしているせいか、たまに麒麟が総本山を訪れて鳳凰の様子を伝えてくれる。
華倉は悪化はしないが中々回復しない鳳凰の容態に、報告を受けるたびに浮かない面持ちになる。