「最鬼は監獄送りになったそうだ」

　様子見も兼ねて華倉と魅耶そして裕の全員が居間に揃っていたところへ、真鬼はそう切り出した。

　ぽかんとしていたのは真鬼を除いた全員がそうだった。
　しかし一番内容が掴めていないのは華倉で、あとの2人は驚いては見せたものの、何の話なのかは捉えているようだった。

　真鬼はそんな華倉の表情を確認し、気怠そうに柱に凭れたまま改めて説明する。

「人間界のみならず他の世界の存在も同様に、大罪人が最終的に送られる場所がある。それが魔空界監獄だ」
「まくうかい？」

　華倉の語尾の上がった鸚鵡返しに、真鬼は簡単に「一般的に言われる魔界と思えばいい」と答える。
　最鬼はそこへ送られることとなった。

　そういうのは地獄ではないのか、と華倉が素直に呟く。
　それに対しても真鬼は簡潔に返す。

「地獄は転生の見込みのある魂が送られる場所だ。比して魔空界監獄に送られるのは主に死刑囚……そこで処刑された魂は、二度と蘇ることはない」

　転生を許されない存在が最期に辿り着く場所。
　ゆえにその監獄は、魂の処分場とも呼ばれる。

　華倉は真鬼の話の全てに動揺を見せた。
　その言葉の悍ましさもあるが、一番響いていたのは「転生されない」こと。

　最鬼はもう二度と、その魂を現すことがなくなる。

「どこでそれを？」

　魅耶の問いかけに、真鬼は一度軽く目を瞑り、んー、と唸ってから「麒麟が」と答える。
　仕事で出先にいたところに麒麟が訪れ、今の内容を手短に説明していったらしい。

「現在鳳凰の力も底を尽いている。ゆえに普段鳳凰が代行している仕事の代理で、神々の許へ出向いたそうだ。そこで」
「スケールでけぇ〜……」

　大人しく聞いていた裕だったが、とうとうぽつりとツッコむようにそう漏らした。

　裕は驚いてはいるが、信じられないといった様子ではなかった。
　華倉よりも人間ではない部分が大きい裕には感覚として理解出来るのだろうか。

　華倉はそんな風に考えながら裕を見ていたが、その裕がやや声のトーンを低くして口を開くので、はたと我に返った。

「ということは、もう鬼神のパワーバランスは戻らないってわけか？」

　裕の言葉こそが、真鬼が話そうとしていた本題そのものだった。
　真鬼は頷いて、鬼神が3体揃う日はもう来ないと繰り返して述べた。

「あくまで予定通りに最鬼が処刑されればの話だ。それがいつになるかは正直まだ分からない。人間界と時間の流れも異なるし……脱獄するようなこともなく、大人しく繋がれていればだが」
「脅（おど）かさないでほしい」