引き継いだ理由
「これは今日中に顧問に提出なので先にお願いします」
「えー、ちょっと待って。まだこっち終わってない」
「それ一昨日までのやつですけど!?」
「ごめんって~」
なんて、後輩にまくしたてられてるというのに、瀧崎は呑気に見える。
希咲(きさき)にも自分の仕事があるだろうに、結局瀧崎の進捗管理する羽目になってる。
俺は今年度から入ったからまだよく知らないんだけど、生徒会ってこんなもんなのだろうか?
「希咲、こっちはチェック終わった。残ってる分あったら回して」
まとめて提出する書類を、指定のケースに入れて、俺は希咲にそう声を掛けた。
希咲はちょっと安堵したように笑って、有り難うございます~と礼を述べた。
……何度も思ってるんだけど、何で希咲じゃなくて瀧崎が生徒会長やってんだろ?
「だったら加藤、これ頼むー。俺こういうの苦手」
ちょっと離れた席から瀧崎がそう俺を呼んだ。
左手には何やら紙の束。
瀧崎の側まで行って、何これ、と紙の束を受け取る。
生徒会の仕事は、実際こんな感じの地味な作業ばかりだ。
俺も自分が役員になるまでは知らなかったし、第一、自分が何故生徒会に呼ばれたのか今でも不思議に思う時がある。
でもこれは、俺の行動が間違っていなかったことの結果でもあるから、誇らしくもある。
「やっぱ3人で回すのギリギリだと思うんだよねぇ。もう1人くらい欲しくない?」
飽きてきたのか、瀧崎がペンをくるくる回しながら言い出す。
まぁ確かに、色んな締め切りが重なってしまう時期はある。
そんな時は3人という人手では間に合わなかったりする。
「女の子いるといいなーってずっと思ってるんだよね。どう?」
「どうって」
何を答えればいいんだ。
瀧崎から受け取った紙の束は、3つに分けてくものだった。
俺はそれを続けながら、お前なぁ、と適当に返事。
そんな瀧崎に対して、希咲から諌める声。
「役員増やすにしても、この仕事を終えてからです! いいからさっさとやってください!」
ぅえー、とかいう奇妙な声を出して、瀧崎はパソコンに向き直る。