守れるようになるのは
珍しく夜中に目が覚めた。
いつも一度寝たら朝まで起きない俺が。
滅多に感じたことのない静寂。
冷たいくらいしんと静まり返った寝室は、俺の知っている場所じゃないみたいだった。
些細な灯りも気になるからと言って、窓には遮光カーテンを着けてるから、本当に真っ暗。
もしかして暑かったりすんのか、と俺は身体を反転させて、サイドテーブルにあるはずのエアコンのリモコンに手を伸ばす。
しかし、背後で深い息遣いを感じて、俺は肘で上体を起こして、そちらを向く。
「浅海?」
隣で寝ているはずの浅海を呼ぶ。
浅海はベッドにはいたけれど、起きていたようで、ベッドの上で座り込んでいた。
何か、やたらと深い呼吸を繰り返している。
俺の呼び掛けにも最初は応えなくて、それが心配になって、俺もちゃんと起き上がった。
「浅海。どうした?」
暗がりの中、浅海の顔に自分の顔を近付けて呼ぶ。
ようやく浅海は俺の呼び掛けに気付いたようで、はっきりとは見えないんだけど、ふっと視線を俺に寄越したようだった。
起こしちゃった、と浅海は呟く。
それは別に俺が勝手に起きただけだよ、つうかそんなん知らないけど、とか色々言いたいことはあった。
でも、そんなことよりも、浅海の様子の異変の方が気掛かりだった。
最初にサイドテーブルのライトを点ければよかったんだろうけど、一瞬でも浅海から目を離すのが怖く思えて。
んん、と小さく呻くような呼気を漏らしながら、浅海は俯きながら両手で顔を覆う。
「ほんとどした? 気分でも悪い?」
季節の変わり目。
俺たちは今年、養子を迎える準備で、去年よりも忙しく過ごしていた。
年明けからやることが続いていたから、ここに来て疲れが出てしまったんだろうか。
自分が割とタフなので、つい浅海のペースを忘れてしまう。
熱は、と口にしながら、何とか浅海の額を探って掌を当てる。
吃驚したのは、発熱だからではない。