Present


 2月も半ばを過ぎると、自習室に来る生徒の数が減って来る。
 高校入試の私立の分が終わるからだ。

 わたしも滑り止めの私立は受かってて、でも本命の公立の試験はこれからだから、今日も自習室へ来ていた。

 もうちょっと英語の点数を上げたいな。
 リスニングとかも教材いっぱい出回ってるけど、いまいち集中が続かない。

 場所が合ってないのかな、と思って、自宅とか学校とか色々試したけど、結局塾の自習室に落ち着いちゃうな。

 さて、と気合いを入れる目的で溜め息をひとつ溢し、わたしはイヤホンを着けようとした。

 んだけど。

「りゃーっ」
「つめたっ!!」

 イヤホンを差すより先に、わたしの耳が何かで塞がれる。
 同時にそれはまぁまぁな冷たさを併せ持っていた。

 思わず大きめの声で叫んでしまう。
 何だ、と言わんばかりの鋭い視線が一斉に飛んできた。

 それらにごめんなさい、と謝るのは、わたしだけではなく。

「ごめん李依(りい)、そんなに驚くとは」

 わたしの耳から手を離し、一緒に謝ってから小町(こまち)が言った。

 そりゃ吃驚するよ、とちょっと頬を膨らまして小町に文句を付けるわたしに、めんごめんご、と小町は笑って鞄を置いた。

「それにしても久し振りだね、自習室で会うの」

 わたしの隣で荷物を広げる小町に、わたしはそう話し掛ける。
 小町は、それがねぇ、と軽く笑いながら教えてくれた。

「冬休み明けの抜き打ちテストで、結構な赤点を取ってしまってねぇ。補習に捕まってたんだよねぇ」

 2週間も、と小町は盛大な溜め息を溢した。
 そうなんだ、と純粋に驚くわたし。

 小町はそんなに勉強出来ないタイプには見えなかったからだ。
 というのも。

「英語だけ出来てもダメなのよー、って担任にめっちゃ説教されたし。うっせぇなババァと思いつつ聞き流していたわ」

 はっはっは、とスマホをマナーモードにしながら小町は続けた。

 そう、小町は英語だけズバ抜けて出来る。
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