プロポーズを形に
「裕、亜紀にゃん結婚するって」
帰宅時に確認したポストから持ってきた招待状を見せながら俺は裕に声を掛けた。
裕はお帰り、と返した後、え、と吃驚して見せた。
俺の元へ近寄り、俺の手元にある品のいい封筒を覗き込む。
「何で招待状がうちに?」
不思議そうな裕の呟きに、ああ、と俺は淡々と答える。
「暫く前に、招待状送りたいから住所教えてーってメール来てたから」
「えっ、そうなの?」
教えた、と続けた俺に、裕が本当に驚いた様子で反応した。
お前ら連絡取ってるの、と俺の顔をまじまじと見詰めながら裕が呟く。
まぁ……連絡先は残ってるし、というだけなんだけど。
「裕と一緒に住んでるって言ったら、じゃあふたり分送るね、って」
俺は食器棚の引き出しからハサミを取り出し、封筒の端を切ると中身を確認した。
中には別々に名前の書かれた招待状が入っていた。
裕に一枚渡すと、俺もソファーに腰を下ろして自分の方の招待状を見る。
センスのいい色合いとイラストであしらわれたカードって感じ。
俺も大学の時の友人らの結婚式、何回か出たけど、亜紀にゃんとは言え女子から招待されるのは初めてだわ。
「そっかぁ」
裕も俺の隣に静かに座ると、招待状をじっと見たまま黙り込んだ。
何となくその瞳は、言いたいことがあるように見えた。
「あの長田と結婚出来る男ってどんな奴なんだろ?」
多分瞳に滲んでいた言いたいこととは別なんだろうけど、裕がそう独り言のように呟く。
それは確かに興味はある疑問だった。
高校時代の話とは言え、亜紀にゃんはまぁ人気者だったし、仕事は出来るしスタイルはいいし、真面目だし明るい。
そんな本人はまぁまぁ競争率の高い男が好きだったわけだし。
でもあれから10年も経ってるから、もう全然知らないコミュニティーに属していることだろう。
「でもよく俺たちなんか招待してくれたな」
暫く間を空けて裕がふと漏らした。
何で、と俺が反応すると、裕は過去を思い返すように目を細めて、だってさぁ、と切り出す。
「俺は殆ど直接は親しくしてないし、お前はまぁ仲良さそうだったけど……うーん、呼ぶほどの仲ではなくない?」
なんて裕は言葉の途中から俺を見て言った。
そうかなぁ……?
「そんなことなくない? だって裕と亜紀にゃん、一緒にチョコ作りとかしたじゃん」
「あ~、まぁそうだけど……それくらいだよ?」