第4話
「お帰りなさい春己。ご飯できてるよ」
確かに玄関の鍵は掛かっていた。
しかし中は電気が点いていた。
今朝出掛けるときに消し忘れたのだろうかと訝しげにリビングまで来た春己を出迎えたのは、エプロン姿のエイノだった。
見たものを理解すると同時に次の動作を止め、春己は一旦廊下まで戻った。
頭を抱えて考える。
此処はどこだ? 確かに俺の自宅だ。
それから再度リビングへ入ろうとした春己を、エイノが先に迎えに来た。
「どうしたのそんな動揺して。あ、カバン預かるよ」
甲斐甲斐しく世話を焼くエイノに、春己はその手を拒否して代わりに訊ねる。
「お前、どうやって入った?」
春己は一人暮らしだ。
合鍵を持つような相手も今はいない。
しかし実際エイノは施錠された春己の自宅に入り、しかも料理までしていた。
意味が分からないを通り越して、そろそろ狂気すら感じ始めても可笑しくなかった。
しかしエイノはきょとんとした様子で首を傾げ、分かりませんか? と呑気に訊ねる。
「僕は今日から此処に住むんですよ。春己との契約が成立したのだから」
春己は自分の耳を疑った。
何て、とエイノの顔をまじまじと見詰め、お前、とその肩を掴んで確認するように言い聞かす。