確認すべきこと


 事前に連絡は受けていた。

「お帰り、華倉」

 縁側。
 近くに棲み付いている野良の三毛猫を膝に乗せて撫でていた鳳凰が、ふと顔を上げて微笑んだ。

 初めは普段通り玄関から入ろうとしていたのだが、ふと何かを思い立って、華倉は玄関の戸から手を離すとそのまま左へと進んだ。
 庭と、居間へ上がれる縁側に続いているのだ。

 華倉が姿を見せると同時に鳳凰も気配に気付いたのだろう、それは文字通り出迎えと呼ぶに相応しい流れだった。
 ただいま、と華倉は応えるものの、やはり普段と異なる出迎えであることは違いない。

 返事をしてもいいものかと戸惑いすら覚えつつも華倉は返事をしていた。
 というのも、いつものパターンが続くからだ。

「何でアンタが先に出迎えてるんですか! アンタは来客だっつの」
「嫉妬か? 全くお前は余裕がないな」

 華倉の声に気付いてだろうか、廊下の奥からやや急ぎ足で姿を見せた魅耶が、まず鳳凰に噛み付いた。
 それからあっさりと切り替えるように華倉に向き直り、お帰りなさい、と魅耶も告げる。

 華倉はそれを聞いてようやく収まりの良さを覚え、再度「ただいま」を返す。
 華倉の鞄を受け取り、もう少し掛かると思いますと魅耶が話を始める。

 真鬼は現在、山林の中を探知中らしい。
 華倉の帰宅時間に合わせて鳳凰も呼んであるため、そろそろ戻って来る頃だろうとのことだ。

 先に着替えるかと問われ、華倉が答えようとした矢先、場に流れ込む空気の流れが「曲がる」。
 何もなかったはずの空中から人の形をした色が、それは次第に輪郭を伴って現れる。

「来たか」

 地に音も立てずに降り立ち、華倉の姿を確認しながら真鬼が言った。

 うん、と頷く華倉の声を合図にしたかのように、鳳凰の膝で寛いでいた三毛猫が起き上がる。
 何も言われない内に自らその場を後にしたようにも見えた。

 それを見送り、して、と話を切り出したのは鳳凰だ。

「確認したいこととは?」
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