仕返し
舜さんが通りかかったのは見ていた。
その後手を洗うために一度俯いてしまったせいで、気付けなかったんだけど。
ちゅ、とうなじに何かが触れる感触。
何だ、と思ったはいいけど、手は石鹸で泡まみれだったため、顔を上げるに留まった。
鏡越しに吃驚した。
俺の身体を囲うかのように舜さんが洗面台に手を付いて、俺の背後に立っていたのだ。
何ですか、と顔を上げた舜さんと鏡の中で目が合ったので、そう訊いた。
舜さんはそのまま俺の肩に顎を乗せて、仕返し、と呟く。
何の話か把握出来ていない俺の腰に、舜さんは腕を巻き付かせる。
「ちょ、っ!」
掌を太ももに這わせ始める舜さん。
慌ててその手を制止させようと思ったんだけど、俺の手はまだ石鹸が流されていない。
気付くと出しっぱなしにしていたはずの蛇口も止められていた。
「舜さんっ!?」
実質、手の自由を拘束されたことを理解した俺は、舜さんの顔を見ようと、何とか首を横へ回す。
しかし舜さんは全く取り合わず、素知らぬ表情のまま攻めてくる。
内腿の方へ指先が伝う。
そのまま、指先でデニムの縫い目をなぞるように、撫で上げる。
「っ、ん」
中心に触れた。
1本の指で何回か短く撫でた後、今度は右手全体で、包み込むように触れる。
「何で、こんなところ、で……」
何が恥ずかしいって、場所も場所だけど、目の前には鏡があるから、自分がされているところも、自分の感じてる表情も見えてしまうこと。
それに支えとしての手が使えないから、何とか脚で踏ん張らなきゃいけないと意識してなきゃならないこともツラい。
「……まさか陸に攻められるとは思ってなかったから。仕返し」
舜さんはそう、淡々と答えながら、手際よく俺の下を全部脱がす。
まぁまぁ固くなってる俺のモノを、舜さんは両手で優しく揉む。
サオも袋も、絶妙な力加減で、ちょっとくすぐったく、でもその手付きはいやらしく。
見てるの恥ずかしいなんてもんじゃないはずなのに、舜さんの手が、嫌でも俺の目を奪う。
ふにふにと動いていた舜さんの右手が、サオを握るように力を込め直される。
まずは軽く上下に扱き出した。
「っ……やだこれ……」
見てなくても分かることなんだけど、さっきよりも一回り大きくなったのがはっきりしてて、ちょっと情けなさまで覚えた。
舜さんは同時に、俺の耳の後ろ側を舐めて来た。
ひぃゃっ、とか言う変な声が出て、自分で吃驚した。
俺、そんなところも気持ちいいの……?
「お前……下手すると全身性感帯になるかもな」